隠し子が発覚したら『氷の宝石商』の独占欲に火がつきました~5年越しの執念で見つけ出され、逃げ場のない溺愛で囲い込まれています~
七井晶子は、困った子供を見るかのように首を少し傾げた。その瞳には、感情の入り込まない硝子のような光が宿っている。
「あら、もしかして昂輝さんからは何も聞いていないのかしら?」
「……何のことでしょう」
蒼乃は、爪が手のひらに食い込むほど拳を強く握りしめた。奥歯がガタガタと震えそうになるのを、必死の思いで堪える。
「私たち結婚するの」
「それは……いえ、嘘です。そんな話……」
掠れた声で否定するのが精一杯だった。
そんなはずはない。
あのキスも、あの涙も、交わした約束も、すべてが嘘だったというのだろうか。
「信じないのは勝手ですけれど、とにかく、私たちの邪魔だけはしないでくださいな」
晶子は、バッグから何かを取り出す。
「邪魔だなんて」
「そうでしょう、今更子供のことを引き合いに出すなんて、邪魔してるとしか思えないわ」
子供。
その言葉が晶子の口から出た瞬間、蒼乃の胸の奥で、何かが激しく弾けた。
「……失礼なことを言わないでください! あなたに私たちの何が……」
「勝手に産んだくせに、今更責任を取らせようとしているじゃないの」
晶子は手に持った写真を蒼乃へ向けた。
輝だ。
晶子はため息を吐くと、その写真をバッグへと戻す。
彼女は怒るでもなく、ただ当然の事実を並べるように、淡々と、峻烈な言葉を紡いでいく。