隠し子が発覚したら『氷の宝石商』の独占欲に火がつきました~5年越しの執念で見つけ出され、逃げ場のない溺愛で囲い込まれています~
自分さえ身を引けば、彼の体面は保たれる。
だとしたら、輝が昂輝を受け入れていない今のうちに……早い段階で離れる方が良いのではないだろうか。
懐いてからの別れは、輝にとって辛い。
母親としての本能が、暗い海の底から湧き上がるように、蒼乃の心を再び支配しようとしている。
ーーブブッ
机の上に置かれたスマートフォンが揺れ、画面が静かに青白い光を放つ。
昂輝からの、短いメッセージだった。
『水族館、楽しみにしている』
画面に浮かび上がったその真っ直ぐな言葉が苦しい。思わず目を細めてしまう。
返事を、打たなければならない。
「……っ」
返信の文字を打ちかけては、晶子のあの冷ややかな警告が脳裏をよぎり、指が止まる。
打っては消し、消しては打ち、結局何も送れないまま、画面は静かに暗転した。
暗い部屋の中で、蒼乃はただ、自分の震える指先をじっと見つめた。
晶子が残していった底知れない毒が、蒼乃を深い闇の底へと引きずり込もうとする。
蒼乃には、それを止める術が分からなかった。