隠し子が発覚したら『氷の宝石商』の独占欲に火がつきました~5年越しの執念で見つけ出され、逃げ場のない溺愛で囲い込まれています~
蒼乃は驚きのあまり声を上げた。
一度きりの水族館のために、ここまで高価なものを用意するとは思わなかったのだ。
「だって必要だろう。これからいろいろなところに出かけるんだから」
昂輝は当然のことのように言いながら、輝を車内へと優しく促した。
「高かったでしょう、すごくしっかりした作り」
「輝くんの体を守るためなんだから、当然だよ。チャイルドシートを買いに行ったんだけどさ、四歳だって話したら、もうジュニアシートの方がいいって勧めてくれて。すごいんだよこれ、リクライニング機能もついてるんだ」
彼は大きな身体を窮屈そうに折り曲げ、車内に潜り込むようにしてシートベルトに手を伸ばした。
早々と席に座った輝が、わくわくとした目で待っている。
「ちょっと待ってな、輝くん。えーっとシートベルトが……」
カチリ、と硬質な音が狭い車内に響く。
彼の甲斐甲斐しい姿をじっと見つめているうちに、蒼乃の胸の奥を重く満たしていた澱のような不安が、少しずつ形を失っていくのを感じた。
婚約者だと名乗った彼女。
七井晶子から浴びせられた、不始末という残酷な言葉。
それらがもたらした冷たい恐怖が、目の前で我が子の安全のために必死になっている昂輝の温もりによって、押し流されていく。
彼がどれほど輝を大切に思っているか、その言葉にならない優しさが、蒼乃の心を静かに打った。
「できた。蒼乃は後ろ、輝くんの隣に乗ってあげて」
「でもそれじゃあ……」
「いいから」
にこりと笑う昂輝。
その言葉に甘えて、後部座席に座る。
何度もこの車に乗っているが、助手席に座らないのは初めてのことだ。
恋人だった時は、当たり前のように彼の隣が指定席だった。けれど、親になった今は、こうして子供を飽きさせないように後部座席に並んで座る。
その当然の変化が、愛おしい。
ほんのりと、胸に誇らしい気持ちが溢れてくる。
「じゃあ出発!」