隠し子が発覚したら『氷の宝石商』の独占欲に火がつきました~5年越しの執念で見つけ出され、逃げ場のない溺愛で囲い込まれています~
車は、高速道路へと乗った。
車内には、輝がいつも見ている子供向けのアニメソングが小さな音量で流れている。
昂輝はバックミラーで時折後ろの様子を伺いながら、楽しげに運転した。
「ママ、すいぞくかんどこ?」
ジュニアシートの心地よさにすっかり馴染んだ輝が、外の景色を眺めながら尋ねる。
「今日はね、おじちゃんが、千葉の水族館へ連れて行ってくれるのよ」
「ちば?」
「鴨川シーワールド」
「かも、あ?」
「かもがわ」
知らない言葉は難しい。しばらく、輝は口の中で『かもがわ』と繰り返した。
車窓を飛ぶように過ぎ去っていく緑の景色に、輝は小さな手を窓ガラスに押し当てる。
「はやーい」
「もう少し走ったらトイレ休憩にしような」
ハンドルを握る昂輝が、優しい声を後部座席へと届ける。
「市原は大きいぞ。帰りは海ほたるに寄ろうな」
やがて車は、市原サービスエリアへと滑り込んだ。
週末の広い駐車場は、多くの観光客の車で埋め尽くされている。
昂輝が車を止めると、蒼乃は輝の様子を見た。
輝はまだ、昂輝に対して、どこか緊張した距離を保っている。昂輝と二人きりにするのはまだ早い。
「じゃあ、私たちは多目的トイレに並んでいるから」
蒼乃がそう言うと、昂輝はすべてを察したように深く頷いた。