隠し子が発覚したら『氷の宝石商』の独占欲に火がつきました~5年越しの執念で見つけ出され、逃げ場のない溺愛で囲い込まれています~
極度の緊張と疲労から、ようやく解放されたのだろう。輝は、広いベッドに横たわると泥のように深い眠りに落ちていった。
夜が更けゆく中、蒼乃はリビングへとつながる扉を開ける。
蒼乃の衣服をすべて汚されてしまったため、今夜は、昂輝に借りたシルクのパジャマを身に纏っていた。
男性用のそれは蒼乃の身体には大きい。袖や裾が少し余っている。
「輝、すぐに寝ちゃったわ」
歩み寄ってきた蒼乃が声をかけると、ソファに座っていた昂輝が顔を上げた。
「良かった。眠りづらいかと心配したよ」
「今日は、いろんなことがあったから。やっぱり疲れたのね」
蒼乃は少し気恥ずかしさを覚えながら、彼の斜め前に立つ。
昂輝の視線が、パジャマを着た蒼乃の首元や手首に、じっと注がれていることに気づく。
「……」
「なあに?」
「いや、こんな時に不謹慎なんだけど」
「え?」
「蒼乃が、俺のパジャマを着ていると思ったら……いいな、うん」
あまりにも真っ直ぐな、そしてどこか子供っぽい彼の言葉に、蒼乃の頬が瞬時にカッと熱くなった。
昼間の事件の緊迫感からは想像もつかない。静かな部屋の中に甘やかな空気が満たされていく。
蒼乃は両手で顔を覆うようにして俯いた。
「も、もう」
「隠さないで、見せて」
昂輝はソファから身を乗り出し、蒼乃の細い手首を優しく掴んで顔を覗き込んでくる。
その瞳には、慈しむような、深い熱が宿っている。
「かわいい」
「バカ」
蒼乃が小さく抗議すると、昂輝は蒼乃の手を引いた。そのまま彼女の華奢な身体を、そっと自分の胸の中へ引き寄せる。
彼の広い胸の温もりに包まれた瞬間、蒼乃の脳裏に、今日アパートのドアを開けた時のあの凄惨な光景が鮮明に蘇った。
身体が、内側からぶるりと震える。
昂輝が着ているパジャマの裾を、ぎゅっと掴んだ。
彼は何も言わずに、そっと蒼乃の背をさする。
「……ありがとう、少し元気が出たわ」