冷徹御曹司との運命の再会 〜隠していた双子ごと愛されました〜
篤史と会えない日々。千恵は寂しさを紛らわすために仕事にのめり込んだ。派遣の仕事も、まごころでのアルバイトも――。
「すみません、成分計算表のシートを作成してみたので確認いただけますか?」
「おっ助かる。ありがとう。えーっと……」
「えっと、竹中です。竹中千恵と言います」
「そうだった。竹中さん、時間あるときに昨日の会議の議事録をまとめておいてくれないかな」
「分かりました」
先輩社員は「昨日の資料も分かりやすかったから安心して任せられるよ」と笑っていた。
以前までまともに顔も上げられなかった千恵は少しずつ変化していった。
(大丈夫よ、働くのは怖くない。いつか篤史さんが帰ってきた時に、情けないままの姿でいる方がもっと怖い)
心の中でそう唱えると、不思議と力が湧いてくるのだった。
体調がすぐれない日々が続いたが、休むと寂しさでいっぱいになってしまう。だから少し無理してでも働き続けていた。
そんなある日、千恵は課長に呼び出された。
「え? 私が正社員、ですか?」
「以前から真面目だったけど、最近特に熱心に仕事してくれてるし、欠かせない戦力だって聞いてるよ。どうかな? 次の更新までに考えてみてくれる?」
「は、はい! 検討させてください」
千恵は嬉しさで舞い上がりそうだった。
(正社員になれるかもしれないの?)
その日の夜、まごころで明美にそれを伝えると、自分のことのように飛び上がって喜んでくれた。
「すごいじゃないの! さすが千恵ちゃんね。でも、正社員になったらここを辞めなきゃいけないでしょう? 寂しくなるわね」
「大丈夫です。副業オッケーなんだって先輩たちが話していましたから。正社員になれてもなれなくても、ここで働き続けます!」
瞳を潤ませていた明美は、千恵をぎゅっと抱き締めた。
「なんて良い子に育ったのっ……! でもね、無理はしないでほしいわ。今より忙しくなったら会社を優先させなさい。将来のためにはその方がいいんだから」
「わ、分かりましたから。明美さん、苦しいっ……」
「あら、ごめんなさい。つい」
千恵が明美から解放されてふうと息を吐いていると、彼女は「そう言えば」と口を開いた。
「緑川さんには報告したの?」
「いえ。今日、連絡してみます」
「きっと驚くわよー」
千恵はまごころからの帰り道、篤史になんて連絡しようかと思案していた。
(最近あまり連絡できていなかったし、緊張するかも)
篤史が海外へと旅立った当初は、毎日のようにメールをしていた。
けれども最近は少し頻度が落ちていた。篤史はヨーロッパ各国を行き来しているらしく、メッセージからも疲れが伝わってくるようだった。だから篤史の負担にならないよう少しずつ返信の間隔を空けていたのだ。
「でも今日は送ってもいいよね」
指輪を見ながらそう呟くと、ふと、目の前の人影に気がついた。
「すみません、成分計算表のシートを作成してみたので確認いただけますか?」
「おっ助かる。ありがとう。えーっと……」
「えっと、竹中です。竹中千恵と言います」
「そうだった。竹中さん、時間あるときに昨日の会議の議事録をまとめておいてくれないかな」
「分かりました」
先輩社員は「昨日の資料も分かりやすかったから安心して任せられるよ」と笑っていた。
以前までまともに顔も上げられなかった千恵は少しずつ変化していった。
(大丈夫よ、働くのは怖くない。いつか篤史さんが帰ってきた時に、情けないままの姿でいる方がもっと怖い)
心の中でそう唱えると、不思議と力が湧いてくるのだった。
体調がすぐれない日々が続いたが、休むと寂しさでいっぱいになってしまう。だから少し無理してでも働き続けていた。
そんなある日、千恵は課長に呼び出された。
「え? 私が正社員、ですか?」
「以前から真面目だったけど、最近特に熱心に仕事してくれてるし、欠かせない戦力だって聞いてるよ。どうかな? 次の更新までに考えてみてくれる?」
「は、はい! 検討させてください」
千恵は嬉しさで舞い上がりそうだった。
(正社員になれるかもしれないの?)
その日の夜、まごころで明美にそれを伝えると、自分のことのように飛び上がって喜んでくれた。
「すごいじゃないの! さすが千恵ちゃんね。でも、正社員になったらここを辞めなきゃいけないでしょう? 寂しくなるわね」
「大丈夫です。副業オッケーなんだって先輩たちが話していましたから。正社員になれてもなれなくても、ここで働き続けます!」
瞳を潤ませていた明美は、千恵をぎゅっと抱き締めた。
「なんて良い子に育ったのっ……! でもね、無理はしないでほしいわ。今より忙しくなったら会社を優先させなさい。将来のためにはその方がいいんだから」
「わ、分かりましたから。明美さん、苦しいっ……」
「あら、ごめんなさい。つい」
千恵が明美から解放されてふうと息を吐いていると、彼女は「そう言えば」と口を開いた。
「緑川さんには報告したの?」
「いえ。今日、連絡してみます」
「きっと驚くわよー」
千恵はまごころからの帰り道、篤史になんて連絡しようかと思案していた。
(最近あまり連絡できていなかったし、緊張するかも)
篤史が海外へと旅立った当初は、毎日のようにメールをしていた。
けれども最近は少し頻度が落ちていた。篤史はヨーロッパ各国を行き来しているらしく、メッセージからも疲れが伝わってくるようだった。だから篤史の負担にならないよう少しずつ返信の間隔を空けていたのだ。
「でも今日は送ってもいいよね」
指輪を見ながらそう呟くと、ふと、目の前の人影に気がついた。