冷徹御曹司との運命の再会 〜隠していた双子ごと愛されました〜
 三日経っても篤史からの連絡はない。
 別にこれまでも返信までに期間が空くことがあったはずなのに、千恵は気が気ではなかった。
 仕事中でも篤史の結婚のことがずっと頭の片隅にあった。

『竹中さん、体調悪いなら早退してもいいんだよ』
『千恵ちゃん、顔が真っ青よ。今日は帰りなさい』

 会社の先輩からも明美からも気を遣われ、まだ夕方だというのに、千恵は自分のベッドで横になっていた。

「篤史さん……」

 ポツリと呟くとそれに反応するようにスマホのバイブが振動した。

「電話? 篤史さんっ」

 表示された篤史の名前を見て反射的に電話に出た。

「もしもしっ篤史さん!?」

 しかし、電話口から聞こえてきたのは女性の声だった。

「もしもし、竹中千恵さんの携帯でしょうか」
「あの、どちら様でしょうか」

 震える声で何とか返すと、彼女は篤史の秘書だと名乗った。

「ご結婚の話を弊社社長から聞いたと伺っておりますが……篤史様へまだご連絡をお送りしていらっしゃったので、念のためお電話をいたしました。竹中さんは混乱なさってるのでは、と」
「どうして篤史さんの携帯から……」

 千恵は呆然と呟いた。すると電話のむこうで彼女が小さく笑ったのが聞こえてきた。

「篤史様がもう貴女と話すことはないとおっしゃったからです。ですが、それでは貴女が納得しないだろうと伝言を預かっております。聞きますか?」

 秘書の言葉が頭の中にうまく入ってこない。千恵は目の前の景色が崩れていくのを感じていた。

(話すことは、ない……。篤史さんがそう言ったの?)

 かろうじて「はい」と返事をすると、秘書が「ではお伝えしますね」と柔らかい声で続けた。

「『協力会社のご令嬢と結婚の話を進めている。もう会うことはない。忘れてほしい』とのことでした」

 その後、どうやって電話を切ったのか覚えていない。秘書が「お気持ちお察しします」と言いいながらも、連絡をしてこないように念押ししていたのだけは、ぼんやりと覚えていた。

(信じられない。篤史さんがそんなこと言うはずない。別れるにしたってこんな……)

 これまで張っていた緊張の糸が切れてしまったようだ。
 千恵がベッドにふせてスマホをいじっていると、『ミドリカワ自動車』という文字が目に入った。

『ミドリカワ自動車、独ハイルマンと業務提携か』

 大きな煽り文字をタップすると、ニュースサイトが開く。
 どうやらミドリカワ自動車の事業の中で苦戦していた電気自動車関連事業を立て直すための業務提携らしい。ハイルマンは電気自動車の業界トップだと書かれている。

(篤史さんのお父様が言ってたこと、本当なんだ)

 ニュースを最後まで読むと、その下のコメント欄には『契約結婚も絡んでるらしい』『上のコメントマジ? 時代錯誤だろ』『ドイツの令嬢と結婚出来るなら最高じゃん』などと好き勝手なコメントが並んでいる。
 悪夢を見ている感覚だったのが、一気に現実なのだと突きつけられた。

(そっか。別れる時って、こんなにも呆気なく終わってしまうものなんだ)

 千恵はスマホを握りしめたまま、気を失うようにして眠りに落ちていった。


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