冷徹御曹司との運命の再会 〜隠していた双子ごと愛されました〜
***
「緑川副社長、明日の一時帰国の件ですが予定通りで問題ないそうです。……どうかされましたか?」
秘書の八乙女(やおとめ)に声をかけられ、篤史は持っていたスマホを置いて首を振った。
「いや、なんでもない。明日の件は了解した。君もしばらくゆっくり出来るんだろう? しっかり休んでおけよ」
「ありがとうございます。では失礼します」
八乙女が執務室を出ていったのを見計らって、篤史は再度スマホを手に取る。
(最近、千恵から連絡がない。一時帰国の連絡をしたのに既読にもならない)
父である壮一郎が無理矢理進めた電気自動車関連事業。篤史にとって、それは厄介なお荷物事業だった。
篤史の予想通り、インフラ整備や価格の面から国内での売り上げは芳しくない。篤史や役員は事業の縮小を求めたが、社長の号令で始めた鳴り物入りの事業であったため、それすら叶わない。むしろ壮一郎は海外に活路を見いだそうとしていた。
結局、篤史が尻拭いのために海外の自動車メーカーに連携を求めることになったのだ。
愛しい恋人に別れを告げてから数ヶ月。
ヨーロッパ中を駆け回っていたが、ようやく大きな商談が一つまとまった。秘書に無理を言って一時帰国を決めた篤史は、真っ先に千恵に連絡を入れていた。
(前は遅くとも二週間以内には返事がきていたが……)
会う時間が取れるだろうと密かに高まっていた期待が萎んでいく。
「忙しいのかもしれないな」
篤は右手の薬指に光る指輪を見つめながら寂しそうに微笑んだ。
その時、ノックの音もなく扉がガチャリと開く。ずかずかと入ってきたのは父の壮一郎だった。
「社長……何の用です?」
「俺がわざわざ日本から来てやった理由、分かっているはずだ」
壮一郎は中央の無遠慮にソファーでふんぞり返った。
「お前、ハイルマンのご令嬢との婚約話を勝手に解消したそうだな。どういうつもりだ」
「勝手にも何も……俺は一度だって了承した覚えはない」
「ふざけるなっ! どれだけ苦労して縁談をまとめたと思ってるんだ! ハイルマンの資金提供がなければミドリカワの電気自動車事業は終わりだぞ!」
壮一郎がテーブルを荒々しく叩くのを篤史は冷めた目で見ていた。
(それが唯一の方法だと信じて疑わないところが、この人の限界なのだろうな)
「ハイルマンには別の提案を持ちかけています。向こうだって馬鹿じゃない。利があれば資金提供をしてくれることでしょう。……それに、ご令嬢には好いた相手がいるそうです」
篤史の言葉に壮一郎は「そういうことか」と鼻を鳴らす。
「お前、同情したのか? 自分が平凡な庶民の女に入れ込んでいるから。あんな女止めておけ。社長の妻にはなり得ない器だ」
「あんな女? まるで知っているような口ぶりですね」
「俺が知らないとでも? お前がしょうもない小料理屋に通っていることも、あの女のことも、全て把握済みだ。まあいい。明日の一時帰国でお前の目も覚めるだろう」
「それはどういう……」
壮一郎は篤史の言葉も聞かず、さっさと部屋を出ていってしまった。
胸騒ぎがした篤史は急いでスマホを取る。千恵に電話をかけるが、呼び出し音が鳴り響くことはなかった。
『おかけになった電話番号は使われておりません』
「どういうことだ?」
篤史の背中には冷たい汗が一筋流れた。
「緑川副社長、明日の一時帰国の件ですが予定通りで問題ないそうです。……どうかされましたか?」
秘書の八乙女(やおとめ)に声をかけられ、篤史は持っていたスマホを置いて首を振った。
「いや、なんでもない。明日の件は了解した。君もしばらくゆっくり出来るんだろう? しっかり休んでおけよ」
「ありがとうございます。では失礼します」
八乙女が執務室を出ていったのを見計らって、篤史は再度スマホを手に取る。
(最近、千恵から連絡がない。一時帰国の連絡をしたのに既読にもならない)
父である壮一郎が無理矢理進めた電気自動車関連事業。篤史にとって、それは厄介なお荷物事業だった。
篤史の予想通り、インフラ整備や価格の面から国内での売り上げは芳しくない。篤史や役員は事業の縮小を求めたが、社長の号令で始めた鳴り物入りの事業であったため、それすら叶わない。むしろ壮一郎は海外に活路を見いだそうとしていた。
結局、篤史が尻拭いのために海外の自動車メーカーに連携を求めることになったのだ。
愛しい恋人に別れを告げてから数ヶ月。
ヨーロッパ中を駆け回っていたが、ようやく大きな商談が一つまとまった。秘書に無理を言って一時帰国を決めた篤史は、真っ先に千恵に連絡を入れていた。
(前は遅くとも二週間以内には返事がきていたが……)
会う時間が取れるだろうと密かに高まっていた期待が萎んでいく。
「忙しいのかもしれないな」
篤は右手の薬指に光る指輪を見つめながら寂しそうに微笑んだ。
その時、ノックの音もなく扉がガチャリと開く。ずかずかと入ってきたのは父の壮一郎だった。
「社長……何の用です?」
「俺がわざわざ日本から来てやった理由、分かっているはずだ」
壮一郎は中央の無遠慮にソファーでふんぞり返った。
「お前、ハイルマンのご令嬢との婚約話を勝手に解消したそうだな。どういうつもりだ」
「勝手にも何も……俺は一度だって了承した覚えはない」
「ふざけるなっ! どれだけ苦労して縁談をまとめたと思ってるんだ! ハイルマンの資金提供がなければミドリカワの電気自動車事業は終わりだぞ!」
壮一郎がテーブルを荒々しく叩くのを篤史は冷めた目で見ていた。
(それが唯一の方法だと信じて疑わないところが、この人の限界なのだろうな)
「ハイルマンには別の提案を持ちかけています。向こうだって馬鹿じゃない。利があれば資金提供をしてくれることでしょう。……それに、ご令嬢には好いた相手がいるそうです」
篤史の言葉に壮一郎は「そういうことか」と鼻を鳴らす。
「お前、同情したのか? 自分が平凡な庶民の女に入れ込んでいるから。あんな女止めておけ。社長の妻にはなり得ない器だ」
「あんな女? まるで知っているような口ぶりですね」
「俺が知らないとでも? お前がしょうもない小料理屋に通っていることも、あの女のことも、全て把握済みだ。まあいい。明日の一時帰国でお前の目も覚めるだろう」
「それはどういう……」
壮一郎は篤史の言葉も聞かず、さっさと部屋を出ていってしまった。
胸騒ぎがした篤史は急いでスマホを取る。千恵に電話をかけるが、呼び出し音が鳴り響くことはなかった。
『おかけになった電話番号は使われておりません』
「どういうことだ?」
篤史の背中には冷たい汗が一筋流れた。