冷徹御曹司との運命の再会 〜隠していた双子ごと愛されました〜
***
「こんな事を言うべきではないかもしれませんが、もう少し気を引き締めるべきでは?」
仕事を終えて執務室を出ようとした時、篤史は八乙女に呼び止められた。
社長秘書の一人として働く彼女は、今やなくてはならない存在だが、物申すような発言をするのは珍しい。
「どういう意味だ?」
別に責めたいわけではない。ただ言葉の真意が分からなかった。すると彼女は意を決したように「ですから」と言葉を続けた。
「最近、週末の連絡が滞り気味ですよね。以前はもっとスピード感をお持ちでしたのに。新ブランドの立ち上げはスピードが命とおっしゃっていましたよね?」
「社員に休日出社を原則禁止にした口で、休日に働けと? 緊急の内容は必ず即時指示を伝えている。それ以上馬車馬になる気はない」
「ですがっ……!」
「なぜそんなにプライベートに口を出すんだ? 君らしくない。……父の言葉を気にしているのか?」
篤史の言葉に八乙女の眉がピクリと動く。
(やはりか)
篤史はため息をついた。
「父の提案は気まぐれだ。『俺と結婚しろ』だなんて話に耳を貸す必要はない」
少し前、篤史は父の壮一郎から「秘書の八乙女と籍を入れたらどうだ」と提案を受けていた。
『彼女は仕事仲間です。それに、もう結婚する必要なんてないはずです』
『我がミドリカワの社長ともあろう男が独身だなんて格好がつかないだろう。八乙女なら経歴的にも悪くない娘だ』
篤史が社長となり、壮一郎は表立って何かを指示することはなくなった。だが、プライドの高さは相変わらずだ。自分の息子が独身だと、彼の周囲がうるさいのだろう。
けれど篤史はもう父の言いなりになる気はなかった。
『俺が貴方の指示で結婚するとお思いですか? ご自身のしたことをもう忘れたのですか? ……ミドリカワは貴方の会社じゃないし、俺はそんなことで判断されるつもりはない!』
そう言って壮一郎の言葉は突っぱねたはずだった。しかし壮一郎は諦めていなかったのだろう。八乙女に連絡し、篤史との結婚を指示したのだ。
(八乙女は真面目だから父の命令を遂行しようとしているのだろうが……)
篤史が結婚したい相手はただ一人。それは揺るがない事実だった。
「すまない。俺からも父に断りを入れておく。八乙女も次なにか言われたら断って良い」
「……そうですか」
八乙女はショックを受けたような顔をして、それだけ言うと部屋を出ていった。
「どうしたって言うんだ……ん?」
篤史のスマホが震える。スマホケースに挟んでいる四枚の葉が目に入ると、篤史の表情が少し和らぐ。
画面をタップすると千恵からのメッセージだった。
『明日、楽しみにしています』
たったそれだけの文章だったが、篤史の心を奪うには十分だった。
『俺もたのしみ』
すぐに返信をすると、そのまますぐに家へと向かった。
(車の状態を確認しておかないとな)
明日は千恵達三人と遊園地だ。篤史の足取りは羽のように軽かった。
「こんな事を言うべきではないかもしれませんが、もう少し気を引き締めるべきでは?」
仕事を終えて執務室を出ようとした時、篤史は八乙女に呼び止められた。
社長秘書の一人として働く彼女は、今やなくてはならない存在だが、物申すような発言をするのは珍しい。
「どういう意味だ?」
別に責めたいわけではない。ただ言葉の真意が分からなかった。すると彼女は意を決したように「ですから」と言葉を続けた。
「最近、週末の連絡が滞り気味ですよね。以前はもっとスピード感をお持ちでしたのに。新ブランドの立ち上げはスピードが命とおっしゃっていましたよね?」
「社員に休日出社を原則禁止にした口で、休日に働けと? 緊急の内容は必ず即時指示を伝えている。それ以上馬車馬になる気はない」
「ですがっ……!」
「なぜそんなにプライベートに口を出すんだ? 君らしくない。……父の言葉を気にしているのか?」
篤史の言葉に八乙女の眉がピクリと動く。
(やはりか)
篤史はため息をついた。
「父の提案は気まぐれだ。『俺と結婚しろ』だなんて話に耳を貸す必要はない」
少し前、篤史は父の壮一郎から「秘書の八乙女と籍を入れたらどうだ」と提案を受けていた。
『彼女は仕事仲間です。それに、もう結婚する必要なんてないはずです』
『我がミドリカワの社長ともあろう男が独身だなんて格好がつかないだろう。八乙女なら経歴的にも悪くない娘だ』
篤史が社長となり、壮一郎は表立って何かを指示することはなくなった。だが、プライドの高さは相変わらずだ。自分の息子が独身だと、彼の周囲がうるさいのだろう。
けれど篤史はもう父の言いなりになる気はなかった。
『俺が貴方の指示で結婚するとお思いですか? ご自身のしたことをもう忘れたのですか? ……ミドリカワは貴方の会社じゃないし、俺はそんなことで判断されるつもりはない!』
そう言って壮一郎の言葉は突っぱねたはずだった。しかし壮一郎は諦めていなかったのだろう。八乙女に連絡し、篤史との結婚を指示したのだ。
(八乙女は真面目だから父の命令を遂行しようとしているのだろうが……)
篤史が結婚したい相手はただ一人。それは揺るがない事実だった。
「すまない。俺からも父に断りを入れておく。八乙女も次なにか言われたら断って良い」
「……そうですか」
八乙女はショックを受けたような顔をして、それだけ言うと部屋を出ていった。
「どうしたって言うんだ……ん?」
篤史のスマホが震える。スマホケースに挟んでいる四枚の葉が目に入ると、篤史の表情が少し和らぐ。
画面をタップすると千恵からのメッセージだった。
『明日、楽しみにしています』
たったそれだけの文章だったが、篤史の心を奪うには十分だった。
『俺もたのしみ』
すぐに返信をすると、そのまますぐに家へと向かった。
(車の状態を確認しておかないとな)
明日は千恵達三人と遊園地だ。篤史の足取りは羽のように軽かった。