冷徹御曹司との運命の再会 〜隠していた双子ごと愛されました〜
4二度目はない
それから数ヶ月、いつもの日常が続いていた。
少し変わったことと言えば、月に一回、お休みをもらえるようになったことだ。
「ねえ、定期的にお休みをあげるから、子供達に色々体験させてあげなさい」
遊園地に行った日、仁美にお礼がてらお土産を渡したところ、彼女は喜んでそう提案してくれたのだ。
千恵は最初は断ったのだが、仁美は譲らなかった。週一回という提案をなんとか月一回にしてもらい、ありがたく休みを受けとることにした。
篤史にそのことを伝えると、彼は大変喜んで、休みを合わせて毎月どこかへ連れていってくれた。子供達も月に一回の遠出を楽しみにするようになり、これまで以上に篤史の好感度が高まっていた。
「はやくおでかけのひにならないかなー」
「いつか、うみにつれてってくれるっていってたよね! たのしみー!」
「はいはい、そうね。ほら、そろそろお着替えして。保育園のバス来ちゃうよ」
「はあい」
「はーい!」
湊斗も紬も毎朝カレンダーを見ながら篤史に会える日を数えるのが日課になっている。保育園の準備を急かすのも、いつものことだった。
バタバタと子供達を送り出し、チェックアウトのお客様をお見送りすると、家に静けさが訪れる。
「さて、シーツ洗ってお布団を干して……買い物行く前に冷蔵庫チェックしないとね」
よし、と気合いを入れて各部屋のシーツを集めていると、玄関の呼び鈴が鳴った。
(お客様……は、夕方チェックインのはずよね)
誰だろうと玄関へと急ぐ。扉を開けると若い女性が立っていた。スーツケースや大きい荷物がないから客ではないようだ。
「どちら様でしょうか?」
「竹中千恵さんですか?」
女性の表情は固く、声は冷たかった。千恵の背中に嫌な汗が流れた。
「そうですけど、貴女は?」
「突然の訪問、お許しください。私はミドリカワ自動車の社長秘書をしている八乙女と申します」
「秘書の……あっ」
その時、千恵の脳裏に過去の記憶がよみがえる。
『お気持ちお察しします。ですが、もう篤史様へのご連絡はお控えくださいますよう、固くお願い申し上げます。……ご理解くださいね。』
篤史のスマホから電話をかけてきた女性の声と同じ声だったのだ。
「今日ここに来たのは、貴女に忠告するためです。もう社長とお会いになるのはお止めください」
「なぜそんなことを貴女が言うの?」
口から出た声は上ずっていて小さく震えていた。
八乙女は千恵を睨み付け「分かりませんか?」と冷たく言い放った。
「迷惑なんです。社長がここに来るために、どれだけスケジュールを詰めているかご存じですか? ミドリカワは今大事な時期なんです。それなのに……社長が田舎のシングルマザーに入れ込んでいてはロクな仕事にならない。貴女の存在が邪魔なんです」
彼女の言葉が深く突き刺さり、千恵はもう何も言うことができなかった。
(邪魔……そうよね)
千恵が俯いて黙り込むと、八乙女は小さくため息をついた。
「『あの時』完全に縁が切れたと思ったのに……ゴキブリみたいにしぶといのね。まあいいわ。分かったら、もう社長と関わらないで。彼が来たら自分から別れを告げなさい」
八乙女はそのまま踵を返して去っていった。
取り残された千恵は長い間、玄関で呆然と立ち尽くしていた。
少し変わったことと言えば、月に一回、お休みをもらえるようになったことだ。
「ねえ、定期的にお休みをあげるから、子供達に色々体験させてあげなさい」
遊園地に行った日、仁美にお礼がてらお土産を渡したところ、彼女は喜んでそう提案してくれたのだ。
千恵は最初は断ったのだが、仁美は譲らなかった。週一回という提案をなんとか月一回にしてもらい、ありがたく休みを受けとることにした。
篤史にそのことを伝えると、彼は大変喜んで、休みを合わせて毎月どこかへ連れていってくれた。子供達も月に一回の遠出を楽しみにするようになり、これまで以上に篤史の好感度が高まっていた。
「はやくおでかけのひにならないかなー」
「いつか、うみにつれてってくれるっていってたよね! たのしみー!」
「はいはい、そうね。ほら、そろそろお着替えして。保育園のバス来ちゃうよ」
「はあい」
「はーい!」
湊斗も紬も毎朝カレンダーを見ながら篤史に会える日を数えるのが日課になっている。保育園の準備を急かすのも、いつものことだった。
バタバタと子供達を送り出し、チェックアウトのお客様をお見送りすると、家に静けさが訪れる。
「さて、シーツ洗ってお布団を干して……買い物行く前に冷蔵庫チェックしないとね」
よし、と気合いを入れて各部屋のシーツを集めていると、玄関の呼び鈴が鳴った。
(お客様……は、夕方チェックインのはずよね)
誰だろうと玄関へと急ぐ。扉を開けると若い女性が立っていた。スーツケースや大きい荷物がないから客ではないようだ。
「どちら様でしょうか?」
「竹中千恵さんですか?」
女性の表情は固く、声は冷たかった。千恵の背中に嫌な汗が流れた。
「そうですけど、貴女は?」
「突然の訪問、お許しください。私はミドリカワ自動車の社長秘書をしている八乙女と申します」
「秘書の……あっ」
その時、千恵の脳裏に過去の記憶がよみがえる。
『お気持ちお察しします。ですが、もう篤史様へのご連絡はお控えくださいますよう、固くお願い申し上げます。……ご理解くださいね。』
篤史のスマホから電話をかけてきた女性の声と同じ声だったのだ。
「今日ここに来たのは、貴女に忠告するためです。もう社長とお会いになるのはお止めください」
「なぜそんなことを貴女が言うの?」
口から出た声は上ずっていて小さく震えていた。
八乙女は千恵を睨み付け「分かりませんか?」と冷たく言い放った。
「迷惑なんです。社長がここに来るために、どれだけスケジュールを詰めているかご存じですか? ミドリカワは今大事な時期なんです。それなのに……社長が田舎のシングルマザーに入れ込んでいてはロクな仕事にならない。貴女の存在が邪魔なんです」
彼女の言葉が深く突き刺さり、千恵はもう何も言うことができなかった。
(邪魔……そうよね)
千恵が俯いて黙り込むと、八乙女は小さくため息をついた。
「『あの時』完全に縁が切れたと思ったのに……ゴキブリみたいにしぶといのね。まあいいわ。分かったら、もう社長と関わらないで。彼が来たら自分から別れを告げなさい」
八乙女はそのまま踵を返して去っていった。
取り残された千恵は長い間、玄関で呆然と立ち尽くしていた。