冷徹御曹司との運命の再会 〜隠していた双子ごと愛されました〜
そんな篤史との関係に少し変化があったのは、数ヶ月後のある日のことだった。
「今日のオススメはれんこんのはさみ揚げか。新メニュー?」
「はい。今回は私がメニューの考案からしてみました」
千恵は料理だけでなく、メニューの考案まで任せてもらえるようになり、それを篤史に食べてもらうのが密かな楽しみになっていた。
「千恵の新作なら間違いないな。一つ頼もう」
篤史は明美の影響で『千恵』と呼ぶ。
けれど彼に名前を呼ばれると気恥ずかしくなってしまい、呼ばれるたびに顔に熱を帯びていた。
「……っ、ありがとうございます」
顔を見られないように背を向け、冷蔵庫からタネを出す。
呼吸を落ち着けながら手際よく揚げ、篤史に差し出した。
「どうぞ、熱いのでお気をつけください」
すると篤史が面白そうにくすりと笑った。
「な、何ですか?」
「すまない。あんまりにも楽しそうにしてるから。……うん、すごく美味いよ。中に挟んでるのはひき肉と豆腐か? ふわっとしてて良いな」
じっくりと料理を味わっている篤史を見ていると、心がじんわりと満たされていく。
(食べてもらってるのに、私の方がお腹いっぱいになってしまうわ)
篤史の口の中に消えていくはさみ揚げを眺めていると、不意に彼と目が合った。
トクンと心臓が波打つ。
「あ、あの……」
何か言わないと。
そう思った瞬間、「千恵ちゃん」と明美の声が耳に飛び込んできた。
「悪いんだけど、お客様が寝ちゃったからタクシー呼んでお見送りしてくるわ。しばらくお店頼める?」
「はい」
「ごめんね。……ほら、田中さーん。そろそろ起きますよー」
明美が客を支えながら店を出ていくと、店内は千恵と篤史の二人きりになる。
急に店内の音がなくなった気がした。
沈黙に耐えきれず篤史に視線を向けると、彼はこちらをじっと見つめていた。
「実は先週の木曜日も来たんだ。千恵はいなかったけど」
「え? あぁ……月の前半は残業が多くて、あまりこちらには来られなかったんです。でもしばらくは定時帰りが多くなるので、コチラのシフトをたくさん入れてもらってますよ」
緊張を隠すように笑みを浮かべて告げると、彼は目を細めて「そうか」と呟いた。
「実はその時、明美さんに許可をもらったんだ」
「許可?」
千恵が首を傾げていると、篤史がスッと立ち上がった。
「君をデートに誘う許可を。今度の週末、俺に時間をくれないか?」
まっすぐに見つめられ、時が止まったように感じられた。
(デ、デート? 緑川さんと?)
なぜそんなお誘いを受けたのか分からない。
けれど彼の真剣な目から目を離せない。結局、千恵は吸い込まれるように頷いていた。
「よろしく、お願いします……」
深々と頭を下げると、頭上で篤史が微笑んだのが分かった。
「これは俺の連絡先。今日は長居してしまったな。失礼するよ」
篤史の会計を済ませ、お見送りしようとすると、ちょうど明美が「やれやれ」と戻ってきたところだった。
「あら、もう帰るの?」
「あぁご馳走様。千恵、週末楽しみにしてる」
颯爽と立ち去る篤史を呆然と眺めていると、明美が嬉しそうに近づいてきた。
「なあに? 週末出かけるの?」
「あ、明美さーん……」
「今日のオススメはれんこんのはさみ揚げか。新メニュー?」
「はい。今回は私がメニューの考案からしてみました」
千恵は料理だけでなく、メニューの考案まで任せてもらえるようになり、それを篤史に食べてもらうのが密かな楽しみになっていた。
「千恵の新作なら間違いないな。一つ頼もう」
篤史は明美の影響で『千恵』と呼ぶ。
けれど彼に名前を呼ばれると気恥ずかしくなってしまい、呼ばれるたびに顔に熱を帯びていた。
「……っ、ありがとうございます」
顔を見られないように背を向け、冷蔵庫からタネを出す。
呼吸を落ち着けながら手際よく揚げ、篤史に差し出した。
「どうぞ、熱いのでお気をつけください」
すると篤史が面白そうにくすりと笑った。
「な、何ですか?」
「すまない。あんまりにも楽しそうにしてるから。……うん、すごく美味いよ。中に挟んでるのはひき肉と豆腐か? ふわっとしてて良いな」
じっくりと料理を味わっている篤史を見ていると、心がじんわりと満たされていく。
(食べてもらってるのに、私の方がお腹いっぱいになってしまうわ)
篤史の口の中に消えていくはさみ揚げを眺めていると、不意に彼と目が合った。
トクンと心臓が波打つ。
「あ、あの……」
何か言わないと。
そう思った瞬間、「千恵ちゃん」と明美の声が耳に飛び込んできた。
「悪いんだけど、お客様が寝ちゃったからタクシー呼んでお見送りしてくるわ。しばらくお店頼める?」
「はい」
「ごめんね。……ほら、田中さーん。そろそろ起きますよー」
明美が客を支えながら店を出ていくと、店内は千恵と篤史の二人きりになる。
急に店内の音がなくなった気がした。
沈黙に耐えきれず篤史に視線を向けると、彼はこちらをじっと見つめていた。
「実は先週の木曜日も来たんだ。千恵はいなかったけど」
「え? あぁ……月の前半は残業が多くて、あまりこちらには来られなかったんです。でもしばらくは定時帰りが多くなるので、コチラのシフトをたくさん入れてもらってますよ」
緊張を隠すように笑みを浮かべて告げると、彼は目を細めて「そうか」と呟いた。
「実はその時、明美さんに許可をもらったんだ」
「許可?」
千恵が首を傾げていると、篤史がスッと立ち上がった。
「君をデートに誘う許可を。今度の週末、俺に時間をくれないか?」
まっすぐに見つめられ、時が止まったように感じられた。
(デ、デート? 緑川さんと?)
なぜそんなお誘いを受けたのか分からない。
けれど彼の真剣な目から目を離せない。結局、千恵は吸い込まれるように頷いていた。
「よろしく、お願いします……」
深々と頭を下げると、頭上で篤史が微笑んだのが分かった。
「これは俺の連絡先。今日は長居してしまったな。失礼するよ」
篤史の会計を済ませ、お見送りしようとすると、ちょうど明美が「やれやれ」と戻ってきたところだった。
「あら、もう帰るの?」
「あぁご馳走様。千恵、週末楽しみにしてる」
颯爽と立ち去る篤史を呆然と眺めていると、明美が嬉しそうに近づいてきた。
「なあに? 週末出かけるの?」
「あ、明美さーん……」