冷徹御曹司との運命の再会 〜隠していた双子ごと愛されました〜
 篤史に連れてこられたのは、鞄などで名前をよく聞く高級ブランドのブティックだった。

「あの、緑川さん? ここは流石に場違いというか……私なんかが入っていい店では……」
「馴染みの店なんだ。女性の好きな店をよく知らなくて申し訳ないが、今は妥協してくれ」

(妥協とかじゃないです!)

 心の中で叫んでも篤史はどんどんと進んでいく。入り口前で思わず立ちすくむと、そっと腰に手を回された。

「そのままだと風邪を引いてしまうだろう?」

 そう言われれば何も言い返せない。
 連れられるままに店内に足を踏み入れたのだった。


「いらっしゃいませ、緑川様」
「今日は俺じゃなくてこの方に。着替えられる服を適当に見繕ってくれ」
「かしこまりました。どうぞこちらに」

 大理石で出来た通路を進み、柔らかい絨毯のエリアに通される。
 そしてあれよあれよという間に、服を着せかえられていた。

「いかがでしょうか」

 店員に連れられて篤史の前に立つと、彼は目を丸くしていた。

「本日は専属スタッフがおりましたので、お顔と髪も少しだけお直しさせていただきました。お客様は色白で顔のラインがシャープですので、髪を結い上げると本日のワンピースによく映えますよね」

 店員が満足そうに話している間、千恵は鏡をチラチラと何度も確認していた。

(これが、私?)

 千恵が身にまとっていたのは黒のセミフレアワンピースだ。手首と首元にゴールドの装飾が控えめに付けられている。
 伸び切っていた髪はシニヨンヘアとして束ねられていた。
 緊張で青白くなっていた肌にはほんの少しだけコーラルピンクのチークが入れられている。
 自分ではなく、夢の中のお嬢様のようだった。

「良いな……。よく似合ってる」

 篤史の声で現実に引き戻される。彼は目を細めて微笑んでいた。

「あ、ありがとうございます……」
「では行こうか。世話になったな」

 篤史は千恵をエスコートしながら店を出ようとする。

「あの、お支払いは?」

 千恵が篤史に囁き声で尋ねると、彼は何でもないように「もう済んでる」と答えた。


 車に戻った後、千恵は分割でも支払うと申し出たのだが、あっさりと断られてしまった。

「俺が車を揺らしたせいだし、格好つけさせてくれ。今日はデートなんだから」
「でも……」
「千恵は随分と雰囲気が変わったな。最初に着ていた服も好みだから、二種類見られて良かったよ」

 篤史が本当に嬉しそうに笑うものだから、千恵はそれ以上言うのは止めにした。

「私も緑川さんの私服、新鮮だなって思っていました。それで緊張しちゃったんですけど……」

 苦笑いしながら告げると、篤史は「そうか、照れるな」とはにかんだ。

「堅苦しいところで疲れただろう。少し休憩しようか」


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