一夜のあと、君に溺れる
良い感じにアルコールが体に馴染んできた頃、「そろそろ行く?」と大ちゃんが覗き込んでくる。

「うん」

コクンと頷くと、大ちゃんはスマートに支払いを済ませて立ち上がった。私も立ち上がると、大ちゃんは手を繋いでくれて、まるで恋人感を演出してくれているみたい。

「紳士だね、大ちゃん」

「そうですか? 彼女の前ではカッコよくいたいので」

「それ、すっごくときめく台詞」

「ワンナイトするからには、本気で桜子さんのこと落としたくなった」

「ん? それってどういう意味?」

「桜子さんに、俺のこと好きになってもらいます」

「好きに……?」

「うん、だから、覚悟してくださいね」

大ちゃんは不敵な笑みを浮かべると、迷いのない足取りで高級ホテルへ入っていく。いつの間に連絡していたのか部屋が予約されていて、その手際の良さに度肝を抜かれた。だっててっきりどこかのラブホテルに行くのかと思っていたし。

高級ホテルは父に連れられて家族旅行なんかでよく利用するけれど、男性と二人でなんてもちろん初めてのこと。

そう思うと、私ってば本当に恋愛経験が皆無に等しいみたい。それなのにワンナイトがしたいだなんて、よく言えたものだ。

「シャワーしてもいい?」

「もちろん。お先にどうぞ」

「ありがとう」

パーティードレスを脱いで、皺にならないようにハンガーに掛けた。髪を解くと、パサリと何かが落ちる。大ちゃんが挿してくれた薔薇の花だ。そっか、ずっとそのままだったんだ。これを挿してもらったとき、嬉しかったな。

シャワーを浴びて、バスローブに着替える。今になって緊張してきた。下着は着けたほうがいいのか、なくていいのか、髪はきちんと乾かしたほうがいいのか、化粧はどうしたらいい……?

わからないことだらけで、頭がパンクしそう。もう少しアルコールを摂取して、酔っぱらいたい気分。
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