一夜のあと、君に溺れる
「あの、お許しいただけますでしょうか?」

「許すもなにも、あなたたちはもういい大人なんだから、好きにしたらいいのよ」

「そうそう、親に遠慮はいらないよ」

「私は孫の幸せな顔が見られたらそれでいい」

「それが長生きの秘訣だわな」

あっはっはっと笑う宮越家につられて、やっぱり私も頬が緩んでしまう。こんなに温かな家庭で育ったから、大ちゃんも杏子さんも優しくて良い人なんだろうな。すごく羨ましい。

「まー、ゆっくりしていきなさいよ」

「そうそう、お昼は食べるだろう? 料理長が張り切ってたよ」

「あとで料亭にもいらっしゃいね」

「ありがとうございます」

「さーちゃん、料亭の従業員もこんなテンションの人が多いから、心してね」

「そうなの。それはすごく楽しみ」

ふふっと笑っていると、いつの間に移動したのか、お祖母様が隣の仏間で何やら御経を唱えていた。ブツブツと呟いた後、チーンと鈴の音が響き渡る。

「桜子ちゃん、ちょっと」

「はい」

呼ばれて仏間に入り、お祖母様の横に座った。お祖母様は私の手を両手で包むと目をカッと見開くので、ビクッと肩が揺れる。

「ちょ、ばあちゃん何やってんの」

大ちゃんが慌てて駆け寄って来たけれど、「大事なことだからちょっと黙りなさい」と一蹴された。

なんだろうかと大人しくしていると、お祖母様がゆっくり口を開く。

「桜子ちゃん、何か悪いオーラが纏わりついてるね」

「えっ?」

「二人とも、これを持っていなさい」

差し出されたのは、数珠をモチーフにしたストラップだった。カバンやスマホに付けられそうな可愛らしいもの。

「これは厄除け守りだよ。常に身につけているといい」

「厄除け……。お祖母様、私、何かに取り憑かれていたりしますか?」

「さーちゃん、ばあちゃんの話は話半分でいいよ」

「これ、大ちゃん。年寄りの言うことは聞くもんだ。これでもばあちゃんは独学で占星術を勉強したからね」

「占星術と仏教と霊的な何かが合わさってるじゃん」

確かに、と思いつつも数珠ストラップを大事に受け取る。例え嘘だとしても、お祖母様のその気持ちが嬉しかったりする。だって私のことを考えてくださっているんだもの。
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