一夜のあと、君に溺れる
「……酔ってます?」

「うーん、酔った勢いなのかしら?」

そうこう言っているうちに、最寄駅に着いてしまった。残念な気持ちになりながら、「じゃあまた」と大ちゃんに挨拶をしようとしたのに――。

「ちょっと今の話、整理させてもらってもいいですか?」

「え、うん?」

大ちゃんは私と共に、電車を降りる。駅のホームのベンチに座った大ちゃんは、また頭を抱えた。整理したいというのだから、何かいろいろ考えているのだろう。とりあえず大ちゃんがしゃべってくれるのを、大人しく待つ。

「……えっと、それで、桜子さんは大人の恋に憧れていて、それがワンナイトだってことですよね?」

「うん、そういうこと」

「そのワンナイトの相手に俺が指名されました?」

「うん。やっぱり迷惑だよね?」

「あの……迷惑っていうか……、いや、ちょっと現実についていけていないというか」

「どうして?」

「俺にとって、桜子さんは高嶺の花だからですよ」

「大ちゃんまで私のことをそうやって思ってたんだ」

何だかちょっとショック。大ちゃんとは今までも結構仲良くお話できてたから、普通のお友達だと思っていたのに。

しょぼんとしていると、「いや、そこ落ち込むところじゃないですからね?」とツッコまれた。

「それだけ、素敵な女性だと思っているってことです」

「じゃあいいじゃない?」

「いや、だから。ワンナイトですよ? ちゃんと割り切った気持ちでできます?」

「できると思う。だって私、人を好きになったことないから」

そう言ったら、大ちゃんはポカンとしたあと、黙りこくってしまった。そしてしばらくの沈黙のあと、「わかった」と私の手を握って立ち上がった。

男性と手を繋ぐなんて初めてだ。すごくドキドキしている。大ちゃんがとても凛々しく見えた。

何だろうか、結婚式の余韻だろうか。アルコールで頭がどうにかなってしまったのだろうか。まるで魔法にかかったみたいに、気持ちがふわふわしている。

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