一夜のあと、君に溺れる
「面白い従業員さんたち」

「まったく、仕事中なのに。好奇心旺盛すぎだよ」

「ふふっ、大ちゃんってみんなに愛されてるのね」

「まあ、昔からよくかまってもらってますよ」

「それってありがたいことよね」

「まあ、そうなんだけどね」

やれやれと眉を下げつつも、楽しそうに笑う大ちゃん。仕事場でもそれだけ大ちゃんが大切にされているってこと。宮越家とはまた違った温かさに触れて、何だか嬉しい。

「自慢の彼女って」

「当たり前でしょ。自慢以外の何ものでもないよ」

「もう、おだて上手なんだから」

「本当のことだからね。さあ、食べましょうか。冷めないうちに」

「そうね。いただきます」

ありがたく、お料理に箸をつける。どれから食べようか迷ってしまうほど、魅惑的な品々。そういえば、父もよく料亭宮こしで会食をしているらしい。こんなに雰囲気のいいお部屋でこんなに美味しいお料理が食べられるんだもの、そりゃお気に入りにもなるわよね。

「大ちゃん、私の父に会ったことある?」

「お客様としてご挨拶した程度かな。俺はあまり接客の仕事しないし」

「そっか」

「でも、いつもうちの料理を褒めてくれるって聞いてる」

「外面はいいけど、堅物な父なのよ。だから、大ちゃんを紹介したら、もしかして失礼なことを言うんじゃないかって心配してる」

「反対される?」

「……可能性はあるかな」

なんて、言葉を濁してしまったけれど、本当は「医師じゃなきゃダメだ」と言われているから、もう反対されているも同然だ。

あー、どうしたらいいんだろう。大ちゃんに嫌な思いはしてほしくないのに、父に会ってもらう前からこんなに前途多難だなんて。

「さーちゃん」

呼ばれて顔を上げる。どうやらずいぶんと下を向いていたらしい。目の前では、穏やかな表情をした大ちゃんが優しく笑みを浮かべた。

「俺は例え反対されたとしても、さーちゃんのこと諦めないけど。さーちゃんはどう思ってるの?」

「私も諦めない。父の言いなりにはならないわ」

「気持ちは一緒ってことだよね?」

「ええ、もちろん」

「俺、認めてもらえるように頑張るから。俺についてきてよ」

「それはプロポーズ?」

「いつでもプロポーズしてるつもり」

そんなことを言われると、とたんにボボボッと頬が熱くなる。思わず両手で頬を押さえた。
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