一夜のあと、君に溺れる
さーちゃんが食事に行くと言っていた店の手前で、ふと足元に違和感を覚えた。踏んだ瞬間、じゃり……と乾いた音がして、ひとつやふたつではない硬い感触が靴底に広がる。異様な足の感触に、思わず立ち止まった。
見下ろすと、道端に散らばった小さな数珠の玉が、街灯の明かりを受けて鈍く光っている。それらは店とは別の方向へ伸びていた。慌てて辺りを見回すと、女性の肩を抱きながら車へ誘導している男性を見つけた。
「さーちゃん?!」
駆け寄ると、それは紛れもなくさーちゃんで、目を閉じぐったりして男性に抱え込まれている。何があったのかわからないけれど、瞬間的に怒りがわいた。
「何してるんだ!」
引き剥がそうと手をかけると、男性はあからさまに顔を歪めながらチッと舌打ちをした。お構い無しに、俺はさーちゃんを奪い取る。ぐったりとしたさーちゃんは、息はしているけれど意識がない。
「誰だよ? 俺はただ酔いつぶれた彼女を家まで運ぶだけ。邪魔するなよ」
「は? 桜子は俺の恋人だけど?」
ぐっとさーちゃんを抱きしめる。すぐに、この男がさーちゃんのお見合い相手である高崎だと理解した。そして彼は、馬鹿にしたような歪んだ笑みを見せた。
「ああ、君が大福くん? 名前の通り、甘ったるい顔をしているね。彼女も可哀想に、君みたいなのに引っかかるなんてね。君も神木坂の名前に目が眩んだ一人?」
「は? 何言ってるんだ? 彼女に何をした?」
「何を慌てているんだ。彼女にはちょっと眠ってもらっただけだよ。既成事実を作ろうと思ってね。だけどまさか君、純粋に彼女が好きとか言わないよね?」
ああ、なるほどと腑に落ちた。高崎は神木坂総合病院の理事長の座を自分のものにするためだけに、さーちゃんに近づいたんだ。さーちゃんのお父さんが、自分の後継者となるべく医師をさーちゃんと結婚させたがっているのを逆手に取って。
だけどそんな企みは馬鹿げている。御堂家を乗っ取るつもりなのか知らないが、さーちゃんを利用しようなどと、虫唾が走る。
それに――
「純粋に好きで何が悪い」
俺のさーちゃんへの想いをお前と一緒にするなと、腹の底から怒りが湧いた。
見下ろすと、道端に散らばった小さな数珠の玉が、街灯の明かりを受けて鈍く光っている。それらは店とは別の方向へ伸びていた。慌てて辺りを見回すと、女性の肩を抱きながら車へ誘導している男性を見つけた。
「さーちゃん?!」
駆け寄ると、それは紛れもなくさーちゃんで、目を閉じぐったりして男性に抱え込まれている。何があったのかわからないけれど、瞬間的に怒りがわいた。
「何してるんだ!」
引き剥がそうと手をかけると、男性はあからさまに顔を歪めながらチッと舌打ちをした。お構い無しに、俺はさーちゃんを奪い取る。ぐったりとしたさーちゃんは、息はしているけれど意識がない。
「誰だよ? 俺はただ酔いつぶれた彼女を家まで運ぶだけ。邪魔するなよ」
「は? 桜子は俺の恋人だけど?」
ぐっとさーちゃんを抱きしめる。すぐに、この男がさーちゃんのお見合い相手である高崎だと理解した。そして彼は、馬鹿にしたような歪んだ笑みを見せた。
「ああ、君が大福くん? 名前の通り、甘ったるい顔をしているね。彼女も可哀想に、君みたいなのに引っかかるなんてね。君も神木坂の名前に目が眩んだ一人?」
「は? 何言ってるんだ? 彼女に何をした?」
「何を慌てているんだ。彼女にはちょっと眠ってもらっただけだよ。既成事実を作ろうと思ってね。だけどまさか君、純粋に彼女が好きとか言わないよね?」
ああ、なるほどと腑に落ちた。高崎は神木坂総合病院の理事長の座を自分のものにするためだけに、さーちゃんに近づいたんだ。さーちゃんのお父さんが、自分の後継者となるべく医師をさーちゃんと結婚させたがっているのを逆手に取って。
だけどそんな企みは馬鹿げている。御堂家を乗っ取るつもりなのか知らないが、さーちゃんを利用しようなどと、虫唾が走る。
それに――
「純粋に好きで何が悪い」
俺のさーちゃんへの想いをお前と一緒にするなと、腹の底から怒りが湧いた。