一夜のあと、君に溺れる
大ちゃんと顔を見合わせる。優しく微笑んでくれた大ちゃんに、愛しさがこみ上げた。

「ありがとう、お父さん」

「ありがとうございます」

二人して頭を下げると、父は照れているのか「ああ」と、ぶっきらぼうに返事をする。そんな父の態度を見て、母が背後でくすくす笑っていた。

思えば母は、大ちゃんとの関係に反対はしていなかった。私のお見合い話にも、母が口出しすることはなかった。ずっと父の言いなりなのかと思っていたけれど、母なりに私のことを見守ってくれていたのかもしれない。

「お父さん、高崎先生はどうなるの?」

「あいつは懲戒免職だ。桜子を酷い目にあわせやがって。医療廃棄物として捨てたいくらいだよ」

「廃棄物にするくらいなら、臨床試験に使ったほうが有意義ですよ」

父と母が、さらりと酷いことを言う。廃棄物として捨てられる高崎先生を想像すると、ふふっと笑いがこみ上げた。

「大福くんも、桜子のことを助けてくれてありがとう」

「いえ、桜子さんが無事で、本当によかったと思います」

「そうだよね。助けてもらわなかったら、今頃わたし……」

高崎先生に、既成事実を作らされるところだった。そのことを考えると、ゾワリと背筋が冷える。

「大ちゃん、本当にありがとう」

「いや、どちらかというと、姉ちゃんの方がすごかった」

「え、杏子さん?」

「悪霊退散って叫びながら、塩をぶつけてたから。高崎は塩に溺れてるし、姉ちゃんの方が悪霊に見えたよ」

「……それはちょっと見たかったかも」

「清島先生も呆れるくらいの、ひどい暴れっぷりだったよ」

大ちゃんは思い出したのか、くくっと笑う。そんな一生懸命になってくれただなんて、感動で胸がじんとなった。

みんなに助けられて今の私がある。何とありがたいことなんだろう。後で必ず、杏子さんと清島先生にもお礼を言おう。
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