敗戦国の皇子に片想いしてしまったら、思ったよりも溺愛されました
「殿下、危険です」

「危険?」

「敵国の皇女ですよ」

その言葉に、胸が小さく痛んだ。

分かっている。

私はエルドリアの皇女。

ノアにとっては敵国の王女。

どれだけ笑い合えても、その事実は消えない。

ノアは少しだけ迷ったように私を見上げた。

そして、いつもの穏やかな笑顔を浮かべる。

「また後でな」

それは断りの言葉だった。

私に気を遣って、優しく笑ってくれたのだと分かる。

「……うん」

私は笑って返した。

けれど胸の奥は、きゅっと苦しかった。

ノアはまた剣を構える。

家臣たちも鍛錬を再開する。

私は窓辺で頬杖をつきながら、もう一度ため息をついた。

「はあ……」

あの笑顔を、一人占めできたら。

あの声で、私の名前だけを呼んでくれたら。

そんなことを考えてしまう私は、きっと。

「ノアに、恋をしているのかもしれない」

小さく呟いた言葉は、風に溶けて消えていった。
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