翡翠の一輪花【完】



────今まで散々ぐちゃぐちゃになっていた感情が、その瞬間、不思議なくらい静かに胸の内へ落ちてきた。


(……もう、いいや)

そう思った途端、
じわりと胸の奥に冷たいものが広がっていく。



最初から、私の入る隙なんてなかったんだ。


花梨と葵は、
きっと最初から結ばれる運命で。

私はただ、
そこに少しだけ迷い込んだだけ。



――それだけだった。






それだけだった、はずなのに。
もう、この想いは終わったはずなのに。

諦めるって決めたはずなのに。


……どうしてこんなに、苦しいんだろう。




「…………っ」


唇を噛みしめて、そっとその場から離れる。

これ以上ここにいたら、
本当に壊れてしまいそうだった。



廊下を歩く。

さっきまで聞こえていた二人の声も、
もう何も聞こえない。


静かなはずなのに……、
胸の奥だけがやけにうるさかった。



(帰ってきた意味、なかったな……。)

ただ、現実を突きつけられて。
ただ絶望、させられただけ────。



あ、でも………。

もう、手遅れだけれど。
早めに気が付けて、よかったのかもしれない。




このままずっと、叶うことのない想いを抱き続けるよりは────。



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