翡翠の一輪花【完】
「……無理しなくていいよ」
静かに落ちてきたその一言が、
胸の奥にじんわりと染み込んでいく。
「翡翠は昔から、ひとりで何でも抱え込むから」
「……っ」
「平気なふりして、無理して。………誰にも頼ろうとしない」
優しく言われているはずなのに、
全部見透かされているみたいで苦しい。
「……たまには、吐き出しなよ」
紺の指先が、
そっと私の頬を伝う涙を拭った。
「俺の前くらい、強がらなくていいから」
その声を聞いた瞬間───どうしようもないくらいに、胸が、ぐらりと揺れた。
────この人は。
葵が気づかなかったことも、
たった一目で見抜いてしまう。
………別に、
二人を比べたいわけじゃない。
そんなつもり、ないのに。
……その違いが、
今はどうしようもなく苦しかった。
「……俺なら」
不意に落ちてきた低い声に、心臓が跳ねる。
「そんな顔、させないのに」
「――っ」
息が止まった。
紺の指先が、
そっと涙を拭っていく。
触れられた場所が、
熱を持ったみたいにじんわりと疼く。
……その仕草が、あまりにも優しくて。
壊れてしまいそうなくらい、
安心してしまいそうで。
……一瞬だけ。
本当に、一瞬だけ。
───このまま、
この人に甘えてしまいたいと思った。