翡翠の一輪花【完】



────五年。
その数字が急に重くのしかかる。


「長ぇよ……ほんと」


責めているわけじゃない。


ただ、ずっと言えなかったことをようやく口にしたみたいな声。

………そのあと、少しだけ間を置いてから言葉は続いた。



「────心配、した。」


その言葉に、胸の奥がきゅっと締まる。

(それって……)


「……ごめん」

気づけば、そう言っていた。

───そして、次の瞬間。



「謝んな」



ボソッと、葵がつぶやいた。

でも、今度はきつくない、
むしろ、少し笑っているみたいな声だった。


「………反省してんなら、一生俺のそばから離れるなよ」



その言葉が、やけに真っ直ぐで。
……これ以上ないくらい、胸が高鳴った。



「……葵」


ゆっくりとその名前を呼ぶと、ようやく葵はしっかりとこちらを見た。

その目は、さっきよりずっと柔らかい。



「なんだ?」


短い返事なのに、距離はない。

むしろ、やっと手が届いたみたいな近さ。



「ごめん、ね………」

「……なんだよ。さっきから謝ってばっかでお前らしくねぇ」


不思議そうな顔をする葵に、苦笑を返す。





……でもね、葵。

私が姿を消したのは、半分葵のせいなんだよ。


────葵が、私の心をかき乱すから。

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