大槻くんの唇はイジワル
「そ、そんなにじっと見られると照れるんですけど」

 私の真剣すぎる視線に戸惑ったのか、成田くんが顔を赤くした。
 その瞬間。

「熱……っ」

 テーブルの向こうで声がして、私は反射的に顔を上げた。

 見ると、大槻くんが手で口もとを押さえていた。周りにいた女の子たちが「大丈夫?」「やけどした?」と心配そうに騒ぎ始める。

 それを見て、血の気が引いた。
 気付けば私は立ち上がり、大槻くんの腕をつかんでいた。

「野本さん?」

 大槻くんが、驚いたように私を見る。

「すぐに冷やしたほうがいいよ!」

 そう言って、彼の手を引き個室から出た。

 とりあえず、洗面所に……。いや、それより厨房にお願いして氷をもらったほうがいいのか。

「野本さん、そんな心配しなくても、大丈夫ですよ」

 そう言う大槻くんに、「大丈夫じゃない!」と焦りながら首を横に振る。

「やけどの痕が残ったらどうするのよ……!」

 余裕のない声で言うと、背後で低い笑い声がした。
 振り返ると、大槻くんが肩を揺らしていた。

「野本さんって、ほんと俺の唇が好きですよね」

 彼に見下ろされ、私は「え……」と目を瞬かせる。

「やけどしたなんて、嘘ですよ」

 そう言って、口もとを隠していた手を下ろす。そこにあったのは、赤みも水ぶくれもない、いつも通りの完璧な唇。

「どうしてそんな嘘」

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