愛しい俺様パイロットと、今日もいちゃいちゃ舌戦中

「すみません。今日は長距離便で疲れがたまってて……」
「あ~、そっか。急に誘ってごめんね」
「いえ。こちらこそ」

 小さく頭を下げ、そそくさと更衣室のドアへ向かう。

「七里さん、合コンとかいつも断るし、今日はお客さんからの名刺も突き返してたから、本気で男に興味ないっぽいよ」
「へえ……綺麗なのにもったいない」

 出て行く寸前、先輩たちは声を潜めたつもりのようだが、地獄耳の私にはしっかりと会話が聞こえた。

 彼女たちの言う通りなので、否定も反論もする気はない。私は昔から、恋愛や結婚に夢を持つことができないのだ。

 両親はともにワーカーホリック気味で、家庭内で生じる負担を押し付け合う夫婦だった。

 常に喧嘩が絶えない彼らにうんざりした私は、自分のことを自分でするだけでなく、彼らが放棄した家事を担ったりもしていた。

 両親は案の定、私が中学生の頃に離婚した。それでもよく持った方だと思う。

 だから早く実家を出て自立したいと思っていたし、誰にも頼らず暮らせるよう、一般的な会社員より待遇の良い仕事がしたかった。それで目指したのがCAだ。

 決してポジティブな経緯とは言えないが、今では誠意とプライドを持って日々の仕事に当たっている。

 家に帰ればひとりで好きな時間を過ごせるし、着る物や食事にも困っていない。

 子ども時代に比べたら断然心地いいこの生活の中に、恋愛や結婚という面倒くさそうなものをあえて介入させる必要性があるだろうか?

 そんな風に思ってしまうから、合コンなどの誘いはいつも断っているのだ。

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