愛しい俺様パイロットと、今日もいちゃいちゃ舌戦中
空港と直結した駅から電車に乗ると、およそ十分弱で自宅の最寄り駅に着く。
そのまままっすぐ家に帰ってもよかったけれど、私はキャリーケースを引いたまま徒歩圏内にあるバーへ向かった。
長距離便から帰った時、回復のためにすぐに家で休みたい気分の日もあれば、時差ボケのせいで身体がちゃんと疲れを感じず、気分が高揚したままというパターンもある。
今日は後者の方だったので、軽くお酒を飲んで、眠気を誘いたかった。
雑居ビルの地下へと延びる階段を下りていき、宇宙船の出入り口を連想する近未来風のドアを開ける。
目の前に現れるのは、店内全体がプラネタリウムのような、暗い空間だ。
壁と天井には常にプロジェクションマッピングで星空が映し出され、天井からぶら下がる照明は、ギザギザとした星の形だったり、三日月だったり、太陽系の惑星だったりと遊び心に満ちている。
まるでテーマパークのようだが、ここが私のお気に入りなのだ。
「お、綺美ちゃんか。いらっしゃい」
私に気づいた店主が、カウンターから声をかけてくれる。つぶらな瞳と口元を囲む髭、そして飲食店らしからぬ、グレーのツナギ姿、頭にかぶったキャップがチャームポイントだ。
「こんばんは。最上さん」
店主に挨拶しながら、店内の照明を反射するステンレス製カウンターの空席を目指し、足を進める。
なんでも店主の伯父は、私の勤める航空会社『スカイイーストエアライン』の運航整備部に所属し、伝説の航空整備士と呼ばれていた人物だったらしい。