愛しい俺様パイロットと、今日もいちゃいちゃ舌戦中

 私たちのやり取りをそばでずっと見ていた梨沙子が、怒りで頬を赤くしている。

 彼女が息を吸い、先輩を呼び止めようしているのが分かったので、私は慌てて彼女を制した。

「梨沙子、いいよ。私なら大丈夫」
「でも、いくら先輩でもあんな言い方……」
「私が付き合い悪かったのは本当だし、彼と交際しているそぶりもなく結婚したって聞いて、驚く気持ちもわかる。もしも知隼さんを本気で好きだった人からしたら、私のこと気に食わないと思うよ」

 苦笑しながらそう言うと、梨沙子がハッとしたように目を見開く。

「じゃあ、あの先輩は深澄さんを……?」
「そうとは限らないけど、あそこまでひどい言葉が口から出るってそうそうないでしょう。先輩自身も感情をコントロールできなかったんじゃないかな」

 不仲の両親に八つ当たりされて育ってきた私には、なんとなくそう思えた。

 彼らは、仕事、家庭、夫婦関係のどれかに対してストレスが溜まっていると、たとえ私自身に落ち度がなくても、理不尽に私を叱りつけた。

 私は自分が悪いのかと思って行動を変えたり、彼らの機嫌を取るように振舞ってみた時期もあったけれど、やがて全部無駄だと気づいてあきらめた。

 ああ、今日もあの人たちはなにか気に食わないことがあるんだなって。

 妙に達観して落ち着き払っていた私は、さぞかわいくない子どもだっただろう。

< 107 / 150 >

この作品をシェア

pagetop