愛しい俺様パイロットと、今日もいちゃいちゃ舌戦中
『あのクオリティでいいと思ってるなら半人前だ。指示の声が小さかったから、勝手に動き出す乗客もいるかもしれない。去年よりはマシだったが、緊急時は客室を制圧する迫力でやれ』
彼女は反論こそしてこなかったものの、表情には俺に対する反発心がありありと浮かび、大きな目で俺を睨んでくる姿は毛を逆立てた猫のよう。
しかし、彼女なら昨年と同じく悔しさを糧にして成長する。そう思うと、不思議と楽しみだった。
パイロットとCAという職種の違いはあれど、打てば響く彼女に対して俺はすでに多少の好感を抱いていたのだろう。
しかし、それが〝多少の好感〟で済んでいたのは、ほんの束の間だった。
俺はその日の訓練を終えた後、気に入りのバーへ立ち寄った。
宇宙をモチーフにした遊び心のあるインテリアが売りで、航空整備士の格好をした変わり者の店主、最上さんが営む店だ。
最上さんはどうやら父とも知り合いのようで、俺は親しみを込めて『知隼くん』と呼ばれている。
地下にあるドアを開け、壁や天井に星が映し出されたプラネタリウムさながらの店内に入るなり、女性が鬱憤を晴らすような声が聞こえて来た。
『ぜっっったいぎゃふんと言わせるんだから! あの俺様パイロット……!』
〝パイロット〟という単語に一瞬ぎくりとするが、まさか自分の話ではないだろうと思い、カウンター席に座るその女性の後ろを通って、一番端の席に着く。
すると、カウンター越しに最上さんが近づいてきたので、注文を伝えようと口を開きかけた……のだが。