愛しい俺様パイロットと、今日もいちゃいちゃ舌戦中
『知隼くん、今日は帰った方がいいかも。さっきから彼女、とある〝俺様パイロット〟の悪口のオンパレードなんだけど、聞いた限りどうも知隼くんの話をしているようで』
『彼女って……』
最上さんが俺にしか見えない角度で、先ほどから騒がしい女性の方を指さす。
制服姿ではなく髪もおろしていたので気がつかなかったが、目を凝らした先にいたのは、俺が一方的に目をかけているCAの七里綺美だった。
かなり酔っているらしく、完全に目が据わっている。
『でも、言ってることは正しいんでしょ? どうやってぎゃふんと言わせるの?』
友人か同僚か、彼女の隣にいる女性が綺美に問う。
綺美は目の前のグラスをグイっと呷り、仏頂面のまま言った。
『早く一人前に成長して、パイロットにも対等に意見できる立場になる……! それで、彼がまた新人いびりをするようなら、びしっと意見するの! フライトの責任はパイロットにあるけど、客室のことは私たちにしかできないでしょ? 彼らの見えない場所で頑張ってる私たちを蔑ろにしたら、自分の首を絞めることになるって思い知らせてやるのよ!』
ぐっと拳を握り、高らかに宣言した綺美。酔って気が大きくなっているのもあるだろうが、負けず嫌いでたくましい彼女の姿は、俺の心を唐突に大きく揺らした。
普段の俺なら、あえて彼女の背後から近き、『ご立派な目標だな』と皮肉のひとつでも言ってやるのに、胸に渦巻く不可解な感情のせいでそれができない。