愛しい俺様パイロットと、今日もいちゃいちゃ舌戦中
綺美も異論はないらしい。玄関で口酸っぱく忠告する俺に逆らうことなく、部屋着姿で微笑んでいる。
一緒に暮らし始めて二週間以上経つので、彼女のプライベートな姿もだいぶ見慣れてはきたが、たとえ見慣れていても、かわいいな、と思う。
それは服装のせいだけでなく、綺美の態度がこのところ一気にやわらかくなっているせいでもあった。
俺は握っていたフライトバッグの持ち手をいったん離し、一段高い場所にいる綺美の体を無言で抱き寄せた。鼻先を彼女の髪に埋めると、彼女が愛用するヘアオイルの甘い香りがして胸が疼く。
綺美の小さな手が、俺のジャケットの背を遠慮がちに掴んだ。
「知隼さん? 遅刻、しちゃいますよ」
「お前の見送りがあっさりしすぎているから、出勤する気になれない」
俺は不満げに言って、彼女にコツンと額をぶつける。綺美の頬が赤く染まり、大きな瞳で戸惑ったように俺を見上げる。
「な、なんですかその屁理屈は……」
「いいから、目を閉じろ」
言われるがままに睫毛を伏せた彼女に、そっと唇を寄せる。綺美は俺からキスをする時いつも戸惑ったような顔をするが、そのくせ唇を離すと、まだ欲しいというように瞳を潤ませる。
だから一度や二度では終われずに、ピンク色のふっくらした唇を、何度も啄んでしまう。