愛しい俺様パイロットと、今日もいちゃいちゃ舌戦中

 隣では機長が注意深く計器の表示を確認しながら、異常発生時の手順に沿って確認作業を進める。

 ハッキリとした原因の究明は着陸後になりそうだが、雲の中を通ったことによる一時的な着氷、またはセンサーの故障だろうと機長が推定した。

 このまま手動操縦でのコントロールは可能であるものの、優先着陸は要請したい。

 機長は管制に無線を繋ぎ、「PAN(パン)-PAN(パン)」と三回宣言する。救難信号の「MAYDAY(メーデー)」より一段階緊急度が低いトラブルの場合に使用する、国際的な通信用語だ。

 管制は淡々とこちらのリクエストに応じ、受け入れ態勢を整えてくれる。

 管制経由でディスパッチャ―にもトラブルの内容は伝わっており、滑走路から駐機場への誘導、整備の手配が整っている旨のメッセージが届いた。

 俺は着陸に向けて冷静に機体の高度を下げながら、頭の片隅で、今日、綺美が出勤でなくてよかったと思う。

 彼女を守るため、心置きなく甘えてもらうために結婚したのだから、俺のことで無用な心配をかけたくない。

 といっても、肝の据わった綺美なら、この程度のトラブルで慌てることもないだろうが……。

 空港上空までやってくると、乗客の不安を煽らないようソフトランディングを心掛けつつ、無事に滑走路内に着陸する。

 誘導路から駐機場までの道のりも問題なく自走でき、パーキングブレーキをセットしてエンジンを停止させると、体中からどっと力が抜けた。

 どうやら自分が想像していたよりも緊張していたようだ。

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