愛しい俺様パイロットと、今日もいちゃいちゃ舌戦中
駅前のデリカテッセンでいくつかお惣菜を買い、ふたりで荷物のキャスターを転がしながらマンションへ向かう。
なにか話したい気もするけれど、うまく言葉が出てこない。
ちょっと前まで顔を合わせれば口喧嘩をしていたのが、なんだか懐かしい。
今思えば、ムキになっていたのはいつも私だけ。どんなに悪態をついても彼が本気で怒らないからって、反抗期の子どもみたいに言いたい放題だった。
実の親にぶつけられなかった怒りも、甘えたいという気持ちも、知隼さんが広い心で全部受け止めてくれるから、きっと安心しきっていたんだ。
前より近くで彼を見るようになって、思う。
知隼さんはいつだって私に〝素直になっていいんだ〟って、背中を押してくれる存在だ。
そして察しのいい人でもあるから、もしかしたら私の気持ちにはとっくに気づいているのかもしれない。
それなのに、不器用な私に合わせて待ってくれているんだとしたら――。
彼の横顔を見ると、それだけで胸が高鳴る。私の想いはもう隠し切れないほどに大きくなっていた。
マンションに到着する直前、私は覚悟を決めて口を開く。
「知隼さ――」
「待て。……あいつだ」
私の呼びかけに、知隼さんの緊迫した声がかぶさった。彼はスッと私の前に出て、私を背にかばう。
あいつって……まさか。
知隼さんの大きな体に隠れた私には前方が見えないが、胸に一抹の不安がよぎる。