愛しい俺様パイロットと、今日もいちゃいちゃ舌戦中

「七里さん……僕だよ」

 夜の路上に響いたのは、不気味な男性の声。

 一度接客しただけの相手の声を覚えているはずがないのに、男性がさも当然のように『僕だよ』と言うので、嫌でも彼の正体がわかった。

「虎須目、さん……?」
「お前はここを動くな。あいつの姿も見るな」

 知隼さんの声にはいつになく緊張感が漂っていて、なんとなく胸がざわめく。

 それに『見るな』って……いったいどういうこと?

 怪訝に思っていると、虎須目さんの足音がこちらのほうへゆっくりと近づいてくる。知隼さんが一歩後ろに下がった。

「信じたくありませんでしたが、七里さんはどうやらあなたと一緒に暮らしているようですね。しかし、だとすると僕に気があるような素振りを見せたことを謝っていただきたい。僕は傷つきました、とても」

 淡々とした口調だが、彼の言葉には妙な迫力があった。

 私が彼に気を持たせたのが悪いってこと……?

「私が謝ることであの人の気が済むなら……」
「真に受ける必要はない。お前は黙ってろ」

 形だけでも謝罪すべきか悩んだものの、知隼さんにぴしゃりと窘められる。

 だけど、彼の背中に隠れて成り行きを見守るだけなんて、私の性に合わない。

 せめて、説得を手伝うことができれば……。

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