愛しい俺様パイロットと、今日もいちゃいちゃ舌戦中

 どうやら早くも酔いが回ってきたらしい。羨ましいだなんて、余計なひと言を付け足してしまった。

 しかし、それは正直な気持ちでもあった。自分自身は恋愛や結婚に夢を持てないとはいえ、愛情のある家庭とない家庭だったら、前者の方がいいに決まっているもの。

「あ。美空(みそら)から連絡が……。ごめん、お先に失礼するよ」

 露木さんがスマホを見て、少し慌てたように席を立つ。

 会計を済ませると、すぐにスマホを耳にあてて「もしもし、美空?」と奥様に呼び掛けていた。

 私たちに向けるものより、優しくて甘い声。本当に、愛妻家なんだなぁ。

 初恋を実らせた上、今でもその相手を心から想っている露木さんにしみじみ感心していると、ふと自分の置かれた状況に気づく。

 あれ? 露木さんが帰っちゃったら私、深澄さんとふたりきり?

 それは気まずすぎる……!

「私もそろそろ帰ろうかな~……」

 さりげなくそう口にして、まだ中身の残っていたグラスをぐいっと傾ける。

 次の瞬間、横からにゅっと伸びてきた深澄さんの手がグラスと私の手を一緒に掴んだ。まるで、一気飲みするのを阻止するように。

「な、なんですか?」
「お前、明日休みだろ? もうちょっとゆっくり飲んで俺に付き合え」
「そりゃ休みですけど……」

 パイロットとCAの勤務形態は似ている。とくに、長距離国際線のフライトを終えた後の一日は、どちらも休日であることがほとんどだ。

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