愛しい俺様パイロットと、今日もいちゃいちゃ舌戦中
「……最上さん、俺も会計。あの酔っ払いを家に送ってくる」
「ああ、だったら支払いは今度でいいよ。あのままじゃ綺美ちゃん、店を出たところですぐに変な男に捕まっちゃいそうだから」
「恩に着ます」
背後で最上さんと深澄さんがそんな会話をしているのが聞こえる。
私なら別にひとりで帰れるし、男の人が近づいてきたって自分で撃退できるのに……。
ドアに手をかけ、外に出る。湿度を帯びた夏の夜風が、全身にまとわりついた。
目の前にある階段を上りたいが、手すりがない。仕方なく壁に手を突いて登ろうとしたその時、再びドアが開く音がした。
「これは大事な商売道具じゃないのか?」
すぐそばで響いたのは、フライト中のアナウンスでも聞いた無駄に色っぽい声。
振り向くと、先ほどまで口喧嘩をしていた相手、深澄さんが立っていた。
それにしても、商売道具って……?
ゆっくり瞬きしながら、彼の手元を見る。そこには、私が店内に置き去りにしていたキャリーケースが。ハッとして、さすがに軽く酔いがさめる。
「か、完全に忘れてました……」
「だろうな。まともに歩けない上、自分の荷物も忘れるような奴が、ひとりで無事に帰れるとは思えない。送ってやるから掴まれ」
軽く腕を差し出され、思わず怪訝な眼差しを向けてしまう。
「深澄さんが、優しい……?」
「さっきの言葉が嘘じゃないとわかっただろ。ぼーっとしてないで帰るぞ」
彼は勝手に私の手を取り、自分の腕を掴ませる。