愛しい俺様パイロットと、今日もいちゃいちゃ舌戦中
酔っ払いの私に抗うほどの気力はなくて、言われた通り彼にしがみついてふらつく体を支えた。
夜とはいえ、じっとしていても汗が出るような気温。しかも長時間フライトの仕事を終えた後なのに、彼のシャツからはふんわりと甘い香りがした。
バーで隣にいる時には気づかなかったさりげない香りなのに、接近しているとやけに色気を感じてしまってどぎまぎする。
落ち着こう。今の深澄さんは、ただの手すり代わりなんだから。
「家、どの辺なんだ?」
「ここから歩いて十分もかからないです。頑張れば、なんとかひとりで帰れますよ?」
「却下。例えばお前をひとりで帰らせたとして、その後なにか危険に巻き込まれた場合、最後に一緒にいた俺は容疑者のひとりになる。そんな濡れ衣はごめんだ」
階段から地上に出たところで、深澄さんがそう言って私を見下ろす。迷惑そうな言い方がいかにも彼らしい。
「そうなったら私が『犯人はこの人ではありません』って証言しますよ」
「どうだか。むしろ、日頃の恨みを晴らすチャンスだと思うんじゃないか?」
「日頃の恨みは……もうちょっと別のやり方で晴らします」
「そっちの方が残虐そうで恐ろしいな。で、どっちに行けばいい?」
右手で私のキャリーケースを引き、左腕で酔っ払いの私を支えている彼がそう言って辺りを見回した。
結局、私をひとりで帰らせるつもりはないようだ。濡れ衣を着せられるのがよほど嫌だとみえる。