愛しい俺様パイロットと、今日もいちゃいちゃ舌戦中
「ここをまっすぐ行くと突き当たりに公園があるんですが、その交差点で右に曲がってしばらく歩いた先にマンションがあります。……本当にすぐ近くなので、ご心配には及ばないのですが」
「夜の公園って意外と不審者が潜んでいたりするだろ。虫よけがあるに越したことはない」
くっついて歩く私たちの姿は、はたから見たらカップルのようかもしれない。
そう思うと気まずくて、バーにいた時のような口喧嘩ができた方がいっそ気楽なのに、と思う。
しかし、深澄さんはこんな時に限って無言。
私は居たたまれなさをごまかすように、大して星の見えない夜空を見上げたり、公園から聞こえてくる虫の声に夏の情緒を感じてみたり、とにかくあらゆる方法で、深澄さんを意識しないよう心掛けた。
とはいえ距離的に大したことはないので、ほんの数分でマンションの前に到着する。
私が住んでいるのは十階建ての中規模マンションで、オートロックや宅配ボックスの設備はもちろん、床や壁の防音性の高いところが気に入って入居した。
仕事柄深夜や早朝にどうしても生活音を立ててしまうことがあるが、そんな時に隣人や下の階の住人に極力迷惑をかけないようにするためだ。
「ここです。荷物、すみません。お手数おかけしました」
するりと彼の腕から手を離し、キャリーケースを受け取って頭を下げる。まだ少しぼんやりするものの、外を歩いたおかげで酔いもだいぶさめた気がする。
「部屋は何階だ?」
「五階ですけど……」
「じゃあ、連絡先。きちんと部屋に着いたら一報を入れろ」
スラックスのポケットからスマホを取り出した彼が、そう言って私に一歩近づく。