愛しい俺様パイロットと、今日もいちゃいちゃ舌戦中
じゃあ、どういう意味……?
険しい顔のまま彼を睨んでいると、深澄さんは穏やかな目で私を見つめた。
「親とか男とか、そういう存在に頼らずともまっすぐに生きてるお前は、少ない水でも立派に育つサボテンと似てるなと思ったんだ。逞しいお前なら、きっと砂漠でも生きられる」
どういう風の吹き回しだろう。深澄さんが私を褒めてくれたみたいだ。しかも、バーで両親や恋愛について愚痴ったことをそんなにちゃんと記憶してくれていたのも意外だ。
とはいえサボテンに例えられたのは微妙な気分で、うまい返答ができずに口ごもる。
「ちゃんと手をかけたら、どんな花を咲かすんだろうな」
そんな言葉と共に、大きな彼の手がポンと、頭の上に乗る。
彼とはいつも言い合いばかりなのに、今夜はどことなく彼との間に漂う空気が違う気がして、調子が狂う。
「……わ、私の頭に花は咲きませんが」
照れ隠しにわかり切っていることを口にしてみると、深澄さんはクスッと笑って手を引いた。
「じゃあ、そろそろ俺は帰る。エレベーターの中で居眠りするなよ」
「さすがにそれはないですよ。送ってくださってありがとうございました」
「どういたしまして。これは貸しにしておく」
「えっ」
今、〝貸し〟って言った……?
「純粋な親切心で送ってくださったんじゃ……」
「俺は優しい男だが、露木さんのように聖人君子というわけじゃない。どうやって借りを返してもらうか考えておくから、そのつもりでな。――おやすみ」
本当に優しい人なら絶対に言わないセリフと意地悪な笑みを残し、彼は駅と反対方向へ歩いていく。
もしかして、彼の家もこの辺りだったり……?
それにしても、酔っていたとはいえ、よりによって深澄さんに借りを作るなんて痛恨の極み……。
私はフラフラとマンションのエントランスに向かいながら、しばらく禁酒しよう、と固く決意した。