愛しい俺様パイロットと、今日もいちゃいちゃ舌戦中
【お疲れ様です。とくにありません】
そっけない返事をすると、すぐに既読がついて吹き出しが追加される。
【だったら俺が勝手に選ぶ】
……どういうこと?
彼の気まぐれは今に始まったことではないが、なにか裏があるのではと警戒してしまう。
【また借りがどうとか言い出すんじゃ……?】
【俺は鬼じゃない。前回の借りもまだ返せていないヤツから、追加で取り立てるようなことはしない】
鬼じゃないと言いつつ、前回の借りはきっちりおぼえてらっしゃるんですね……。
なんと返信するか悩んでいると、彼とは別の人からのメッセージが届く。
親しい同期のCA、児玉梨沙子からだった。
【明日からのリカレント、マジで憂鬱だよ~! 去年やったこと、もう全部忘れてる】
語尾には泣き顔の絵文字がついていて、私はふっと苦笑した。
リカレント――とは、『反復』や『繰り返す』という意味の言葉だが、CAの私たちが言うリカレントは、年に一回受けなければならない定期訓練のことを指す。
時期は人それぞれだが、羽田空港の敷地内にある自社のトレーニングセンターにパイロットとCAが集められ、緊急脱出や消火訓練、応急救護などを、座学と実技で二日間みっちり学ぶ。
二日目の最後には試験があり、万が一その結果が合格ラインに満たないと、再訓練になってしまう。
とはいえ、私も梨沙子も一度も不合格になったことはないけれど。