愛しい俺様パイロットと、今日もいちゃいちゃ舌戦中
予定通り、翌日からリカレントトレーニングが始まった。
一日目は座学がほとんどで、基本的な緊急時の対応、過去の重大インシデント、法改正に伴う社内ルールの更新事項等を、ひたすら頭の中に叩き込んでいく。
その後、AEDを使った応急救護の実技訓練があり、そちらもそつなくクリアすることができた。
新人の頃から一日目の方はそれほど苦労しないで済んでいるが、問題は二日目だ。
私たちが乗務する旅客機が再現された、実物大の客室模型を使って緊急脱出の訓練が行われる。
施設内には大型のプールもあり、海上での脱出を想定した訓練の際は、プールに脱出用スライドと呼ばれるすべり台を下ろし、非常口から滑り降りる。
今年の訓練は火災を想定したものだったのでプールは使用しないようだが、機内には煙が充満するというリアルな訓練だ。
機体後方にあるギャレーから出火しているという想定で、訓練に参加しているCAが慌ただしく動き出す。
同じく参加中のパイロットは、乗客役としてシートに座っている。
「後方ギャレー、煙が出ています!」
「消火器を持ってきてください!」
「機長に報告してください!」
周囲のCAと役割分担をし、大声で的確に、かつ手短な言葉で情報を共有する。
乗客役のパイロットがひとり、パニックを起こした演技でシートベルトを外そうとしていたので、瞬時に駆け寄ってその行動を制した。
乗客が動いてしまうと、通路を塞がれて消火も避難もスムーズに進まないからだ。