愛しい俺様パイロットと、今日もいちゃいちゃ舌戦中

「そのままお座りください! シートベルトを締めてください!」

 フロア全体に響く声で、乗客への指示を続ける。別のCAはインターフォンでコックピットへ連絡を取り、また別のCAは、避難経路として使用するドアを選択し、脱出準備に取り掛かっている。

 私が避難誘導の準備をしていると、今回使用できないはずのドアの前で、新人らしき若いCAがドアを開けようとしていた。

 あまりに必死過ぎて、周囲の状況が目に入らなくなっているようだ。

「そのドアの向こうは火が燃え広がっているエリアです! 開けないで!」

 すぐさまインストラクターの鋭い声が飛び、若いCAはハッとしたように目を見開く。

 ミスをしたショックからか、徐々に彼女の瞳が潤んでくる。その姿を見ていたら昔の自分と重なり、胸の奥に懐かしい痛みを覚えた。

 ……私にも、昔はあんな時代があった。あれは、CAになって初めて訓練に臨んだ時のことだ。





 今日と同じく火災を想定した訓練だったけれど、大声で指示を飛ばす先輩方の迫力、言うことを聞かない乗客の態度、煙で段々と視界が遮られていく状況にすっかりパニックに陥り、通路に立ったまましばらく呆然としてしまっていた。

 そんな私の頭をグイと押し、激しく叱りつけてきた人物がいた。

『頭を下げろ! 煙を吸って死にたいのか?』

 乗客はシートベルトを外さないようにと言われているはずなのに席を立っているその人物は、今より少し若い、しかし当時から堂々としたオーラを放つ深澄さんだった。

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