愛しい俺様パイロットと、今日もいちゃいちゃ舌戦中
「物をもらったからって、別に猫をかぶる必要はないぞ」
「猫をかぶってるわけじゃ……。あなたとの接し方に、ちょっと迷走しているだけです」
ぼそぼそと、本音を打ち明ける。いつも売り言葉に買い言葉という感じだから、彼と普通の会話をするイメージが湧かないのだ。
「俺に向けるのは、だいたい不機嫌そうな顔だもんな。たまには満面の笑みを見せてくれたっていいのに」
満面の笑み? 私が、深澄さんに?
「そんな自分は少しも想像できません」
深澄さんは私のそっけない返事に、曖昧な笑みを浮かべた。
車は駐車場の外に出て、一般道へ入る。混雑していなければ、十分くらいで帰宅できそうだ。
対向車のライトに照らされる深澄さんの横顔は、いつもの意地悪な彼とは少し違って見えた。
物憂げと言うか、切なげというか……。
梨沙子をはじめとする同僚たちが彼を『メロい』と表現するのは、もしかして彼がこんな顔をしている時のことだろうか。ちょっとだけ、共感できたかもしれない。
「ま、お前が俺に笑いかける日なんか来たら、フライトでよからぬ天候トラブルに遭遇しそうだもんな」
しかし、次の瞬間にはもう、いつもの彼に戻って嫌味を炸裂させる。
やっぱり、深澄さんは深澄さんだ。