愛しい俺様パイロットと、今日もいちゃいちゃ舌戦中
『操縦室よりご案内申し上げます。当機はまもなく着陸態勢に入ります。シートベルトをお締めいただき、座席を元の位置にお戻しください』
この、無駄に色っぽい低音ボイス……間違いなく、深澄知隼だ。
案内の通りにシートベルト着用やテーブルの位置を戻すよう乗客に促しつつ、頭の片隅で思う。
離陸後のアナウンスは機長の露木さんが担当していたけれど、今は副操縦士の彼と交代しているようだ。
深澄千隼は、社内のパイロットで一番苦手な……というか、勝手に天敵だと思っている相手。アナウンスで彼の声を聞いただけで、若干むかむかする。
三十二歳の彼は切れ長の目が印象的な男前で、身長一八〇センチ越えというモデル体形。パイロットとしての能力も優れており、超がつくほど女性にモテる。
さらに、それを『当然だ』とでも思っていそうな俺様タイプだ。
普段の彼の言動を思い浮かべてますます苛立ちそうになるものの、仕事に個人的感情は関係ない。着陸前になにより優先すべきは、安全確認だ。
私は機体中央にある、機内食など飲食物を準備をするキッチン――私たちはギャレーと呼んでいる――に移動し、カートや備品がきちんと固定されているか、オーブンやコーヒーメーカーのスイッチがオフになっているかを、他の担当者と共に確認する。
それから再び客室に戻ると、シート周辺の設備を再確認する他、乗客の顔色などもさりげなくチェックし、不安そうな人がいれば声をかける。
先ほどクルーレストで髪を直してあげた後輩は、機体後方のトイレのチェックしていた。