愛しい俺様パイロットと、今日もいちゃいちゃ舌戦中
それぞれ確認が済むと、CAの責任者であるチーフパーサーに報告を上げ、さらにその報告がコックピットの機長へと伝わる。それでようやく着陸できる状態となるのだ。
私たちCAも指定のシートへと移動し、保安要員として神経を尖らせながら、機体が高度を下げていく様子を見届ける。
昼頃にサンフランシスコを出発したこの便が羽田に到着するのは、日本時間で翌日の夕方四時頃。
飛行時間そのものは十時間程度なのに、時差のせいで未来へと来てしまったようなこの不思議な感覚に、新人の頃は混乱したものだ。
「ご搭乗ありがとうございました。またのご利用をお待ちしています」
長かったフライトを終え、機体は無事に羽田に降り立った。荷物を持った乗客が、次々に空港と接続したボーディングブリッジへと出て行く。
忘れ物がないか、困っている乗客がいないかををさりげなくチェックしながらドア付近で見送りをしていると、ひとりの男性客が私の前で立ち止まった。
スーツの胸元には、見覚えのあるペイズリー柄のネクタイ。C24の座席にいたお客さんだ。
「本日のご搭乗、誠にありがとうございました」
笑顔が引きつりそうになるのをこらえ、型通りの挨拶で彼を見送る。プロ失格かもしれないが、〝またのご利用を――〟というフレーズは、どうしても言えなかった。