愛しい俺様パイロットと、今日もいちゃいちゃ舌戦中
私の気持ちを知る由もない男性は、ゆるりと口角を上げる。
「僕は海外出張が多いので、また絶対にスカイイーストを利用します。その時、七里さんがまたいてくれるといいな。これ、受け取ってください」
スッと差し出されたのは、彼の素性が書かれた名刺だった。あまりまじまじと見たくはなかったが、男性は国土交通省の職員で、虎須目さんという変わった名前らしい。
わざわざ名刺を差し出すということは、フライト中不自然に目が合ったのも、私の考えすぎではなかったのだろう。丁重にお断りするため、口を開く。
「申し訳ございません。弊社の規定でこういった物は受け取ることができないんです。お気持ちだけ頂戴いたします」
「そうですか……残念です。ではまた仕事で利用した際にはよろしくお願いします」
男性は軽くがっかりした表情をしたものの、名刺をすぐにポケットにしまい、ボーディングブリッジの方へと向かっていった。
あっさり引き下がってもらえたので、胸をなでおろす。
中には、お客さんからの好意を断ったがゆえに暴言をぶつけられた、なんて経験がある先輩CAもいるので、こういった対応には結構神経を使うのだ。