愛しい俺様パイロットと、今日もいちゃいちゃ舌戦中

 あまり乗り気でない私は、テーブルとソファが備わった接客スペースへと案内された後も、店員とのやり取りは彼に任せ、カウンターに置かれたフラワーアレンジメントを観賞する。

 白いユリとアンスリウムのシンプルな組み合わせが上品だ。

「おい。聞いてるか?」

 カタログを広げて説明を受けていた彼が、見かねたように私の顔を覗き込む。

「いいえ、まったく」

 ツンとした態度でありのままを告げると、深澄さんがふっと鼻から息を漏らして笑う。

 馬鹿にされたのかと思いきや、彼は唐突に甘やかな笑みを浮かべ、軽く伸ばした指先で私の頬を撫でた。

 羽根が軽くかすめた程度の感触だったが、人前で急に顔に触れられたことで気が動転し、頬に熱が集まっていく。

『……仕方のない奴だ。彼女、今日のデートに私が遅刻したからへそを曲げているんです。ほら、いつまでもむくれていないで機嫌を直すんだ』

 英語で話したのは、私たちが親密なカップルだと店員に誤解させるためだろう。

 しかし、私のことを怒りっぽい人間のように言うのはやめてほしい。

 元来の負けず嫌いがむくむくと膨らんできて、私も英語で応戦する。

『あなたが、遅刻をタピオカドリンクだけでごまかそうとするからでしょう? 婚約指輪はとびきり素敵じゃないと許さないんだからね』

 ここまで言えば、彼も動揺して化けの皮が剥がれるに違いない。

 いくらパイロットが高給取りだからって、婚約指輪の値段はTシャツやマグカップとはわけが違う。契約結婚の相手にそこまでできないと、白旗を上げることだろう。

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