愛しい俺様パイロットと、今日もいちゃいちゃ舌戦中

「もちろん、最初からそのつもりだ」

 今度は日本語でそう言った彼。聞き取れないらしい店員が、不思議そうな顔をする。

「えっ?」
『この店の指輪は、熟練の職人が、手彫りで繊細な柄をつけてくれる。たとえば、この波模様はスクロールといって、〝永遠〟を意味する。これに、〝永久不変〟を意味するダイヤをつけよう。お前が望む大きさにする』

 深澄さんはテーブルに広げられていたカタログの中から指輪のひとつを指さし、私に微笑みかけた。

 その眼差しは、居心地が悪くなるほど甘い。一瞬ドキッとしたけれど、それ以上に『やられた……』という思いでいっぱいになる。

 ダイヤを好きな大きさにしてもいいだなんて、彼はさぞかし懐の広い婚約者だと思われたことだろう。

 それに、ハワイの人たちはジュエリーを大切な家族で代々受け継いだり、幸運を呼び込むお守り代わりに身につけたりする習慣があり、ハワイアンジュエリーは単なるファッション以上の意味を持っている。

 だからこそ、一つひとつの模様にも意味があるのだ。

 CAとして各国を回ってきた私にも、それくらいの知識はある。ここで私が折れなければ大人げないし、お店の人にも気を遣わせてしまうだろう。

 今の私にできることと言ったら――。

『……つまらないことで怒ってごめんなさい。ダイヤは小さなものにします。リングもできれば細めで』
『もっとわがままを言ってもいいんだぞ。お前の希望は全部叶えてやる』
『遠慮してるわけじゃないんです。普段使いができた方が、指輪を身に着けてあなたの存在を感じる時間が増えるでしょう?』

 ……こんな、陳腐な茶番を演じるくらいだ。

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