愛しい俺様パイロットと、今日もいちゃいちゃ舌戦中
夫婦に貸し借りはナシ
「必要なものは全部入れたか?」
「はい。ひと通りは大丈夫かと……」
寝室をぐるりと見渡した私は、深澄さんの目を見て頷いた。傍らの大きなキャリーケースには、彼の家で生活できるよう、服や生活用品をできるだけ詰め込んだ。
マンションのポストに届いていた例の手紙は、一旦彼に預かってもらっている。
気味が悪いので本当はすぐにでも捨てたかったけれど、相手を追い詰めるためには、証拠として保持しておいた方がいいと彼が助言してくれたからだ。
「よし、荷物がまとまったなら車に――」
そう言いかけた彼が、ふと部屋の奥に目を留める。
彼は私の脇をすり抜けて窓辺に歩み寄ったかと思うと、そこに整然と並べてあるミニサボテンのうち、頭に花を咲かせているひとつを手に取ってこちらを振り返った。
「こいつらのこと忘れてるぞ」
「わ、忘れていたわけではありません。必要最低限のものではないと思っていただけで……」
「大切にしてるものなんだろ? いくら世話が楽でもずっと放置していたら枯れるし、車の中で倒れないように箱かなにかに入れて持っていこう」
サボテンを観察しながら、注意深くそれぞれの鉢を窓辺から移動させる深澄さん。
意外と面倒見がいいらしい。サボテンを〝こいつら〟と呼んだのも、ちゃんと生き物として扱ってくれている感じがして、悪い気はしなかった。