愛しい俺様パイロットと、今日もいちゃいちゃ舌戦中
サボテンを含めた荷物を車に乗せると、夕方五時を過ぎた頃、彼のマンションに向かって出発する。
「私はもうこのあたりをフラフラするのはやめた方がいいですよね。最上さんのお店にも、しばらく行けないな……」
車窓から外を眺め、ぽつりと呟く。いつの間にか太陽は傾き、見慣れた風景が茜色に染まっている。
「そう悲観的になる必要はないだろ。俺が一緒に行ける時は付き合うから」
「それって月に何回もないですよね? パイロットの深澄さんがお酒を飲めるタイミングは限られているし」
「気にするな。お前の隣でノンアルでも飲む」
……なんだか彼が優しすぎて調子が狂う。怖い目に遭った私を気遣ってくれているのか、それとも本来の深澄さんはこういう人なのか。
いずれにしろ以前とは明らかに違う感情で彼と向き合っているのは確かで、憎まれ口を叩くばかりの会話も、穏やかなものに変化してきた。
お互いの利害のために結婚するとはいえ、気の置けない友人のような関係にはなれるだろうか。
「……あの。ちはや、さん」
私が遠慮がちにそう口にした瞬間、彼の目が一瞬だけちらりとこちらを向く。そのまま無言でバックミラーを一瞥した彼は、周囲に車がいないことを確認すると、なぜか路肩に車を停めた。
静かな車内に、ハザードランプの点滅音が響く。彼がなにも言わないので、段々気まずくなってくる。