愛しい俺様パイロットと、今日もいちゃいちゃ舌戦中
「ご挨拶はいつにしますか?」
「両親と会えるのはだいぶ先になると思う。あのふたり、少し前から世界一周クルーズに出かけていて、帰ってくるのは半年後なんだ。結婚については、俺からうまく伝えておくから安心しろ」
「ふたりで世界一周なんて、本当に仲のいいご両親なんですね」
「ああ。うんざりするほどにな」
私の両親はすでに離婚しているが、たとえ婚姻中の状態だったとしてもふたりで世界一周を共にするなんてあり得ないだろう。
私が生まれてからも、ごく普通の家族旅行にいった記憶さえない。
「うちの親には、挨拶も結婚の了解を取ることも必要ありませんからね。私という人間にいっさい興味がない人たちなので」
「わかった。お前がストレスを感じる相手と無理に歩み寄る必要もないだろう」
知隼さんのさっぱりとした考え方に救われる。
彼自身は愛情のある家庭で育ったにもかかわらず、こちらの事情を汲んで私の意思を尊重してくれるのがありがたかった。
翌日はお互いにフライトの疲れがたまっており、半日以上寝ていた。
目が覚めた時にはすでに午後一時を過ぎており、部屋のカーテンを開けて伸びをすると、疲労はすっかり抜けていた。
あの気味の悪い手紙のこともほとんど思い出さなかったし、精神的にも穏やかだ。もしも自宅にとどまっていたら、気が休まらなくてろくに眠れなかっただろう。
知隼さんに感謝しないとな……。