愛しい俺様パイロットと、今日もいちゃいちゃ舌戦中
洗顔やスキンケアを済ませてからリビングダイニングへ移動すると、私より先に起きていたらしい知隼さんがスマホを耳にあてて誰かと電話していた。
「だから、俺たちは昨日まで乗務だったんだ。彼女も疲れているし、日を改めてくれ」
軽く苛立った声に、不穏な空気を感じ取る。
部屋を出た方がいいかと思いドアの方にくるりと向き直ったものの、直後に知隼さんが「綺美」と私を呼んだ。
振り向くと、げんなりした表情の彼が歩み寄ってきて、私にスマホを差し出す。
「……姉だ。お前からもなんとか言ってくれないか? 弟の婚約者にぜひ会いたいと、よりによって今日、うちを訪れると言ってきかないんだ」
「えっ?」
ぎょっとして画面を見ると、【通話中 露木美空】とハッキリ表示されている。
そ、そんなこと急に言われても……!
私がまごついている間に、知隼さんがしれっとスピーカー機能をONにする。
「今ここに彼女もいるが、非常識な姉さんに呆れて声も出せないようだ」
「ちょっと、勝手に失礼なこと言わないでください……!」
知隼さんが嫌みっぽい言い方をするので慌ててしまう。するとその直後、スマホから女性の声が聞こえてくる。
『わぁ、あなたが綺美ちゃん? はじめまして! 知隼の姉の美空です』
私たちの不穏な会話などものともせず、美空さんがマイペースに明るく挨拶をした。
助けを求めるように知隼さんの方を見つめるも、『俺にはどうしようもない』とでも言いたげに、珍しく覇気のない顔で首を左右に振った。
ここは美空さんに合わせるのが賢明のようだ。